阪神・淡路大震災を次世代にどう伝えるか カンテレがザ・ドキュメント「30年目の難問 震災を知らない学生たちへ」 1月31日深夜放送

阪神淡路大震災当時→震災発生後、神戸市街地のあちこちから火の手が上がったⓒカンテレ

 今年発生から30年目の節目を迎えた阪神・淡路大震災。ドキュメンタリー番組を得意とするカンテレのザ・ドキュメント「30年目の難問 震災を知らない学生たちへ」が31日深夜(2月1日早朝)1時25分から関西地域ローカルで放送される。

 関東大震災以来の都市直下型地震は6434人の命を奪った。その後も日本列島では東日本大震災をはじめ熊本、能登と地震災害が相次ぐ。国土の東西物流大動脈を担う神戸・阪神間12市町は急速な復興を遂げ、今では震災後に地域で生まれたり移住してきた人々は半分以上を占める。教訓や体験を次世代に「どう伝えるのか? その意味とは?」を、震災後生まれの大学生の視点を通し、やはり20歳代で震災後生まれのディレクターが1年半追い続けた渾身(こんしん)のレポート。

ゼミ生桜の下で写真撮影→震災をテーマに卒業制作映像に取り組んだゼミ生たちⓒカンテレ

 一昨年夏の関西大学社会学部メディア専攻・斉藤潤一教授のゼミ授業風景から始まる。同教授は東海テレビのドキュメンタリー部門を長く担当し数々の賞を受けた著名な映像制作者。19人の受講生に卒業課題として「阪神・淡路大震災」のドキュメンタリー制作を出す。

1.17集い竹灯籠前の学生たち→1月17日朝5時46分、神戸市中央区東遊園地にたたずむゼミ生ⓒカンテレ

 制作過程を追うのは、カンテレ報道情報局報道センター・入道楓ディレクター(26)。学生と同じく「誕生以前の災害を知らないのは当たり前」の認識で一つずつ震災がもたらした地域と住民の心に残る傷跡をともに訪ね歩く。遠く熊本や能登にも一緒に足を運び被災者の声を聞き、現場で見聞きし映像に収める。

 その間に学生の心も揺れ動く。やりきれない思いでこぼれていく仲間も出て卒業制作は困難を極める。そして映像は今年1月17日の出来事を追い完結を迎える。

完成したザ・ドキュメントの冒頭映像と入道ディレクター

 入道ディレクターは日頃はコツコツと10~15分の企画ニュース制作に携わる新鋭。昨年末にはアジア・太平洋地域16カ国の優れた映像コンテンツに贈られる「アジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワード2024」ショートフォーラム部門で最優秀賞を受けた。「人を描くのが好きで報道記者を目指し番組制作してきたけど、1作品1年半の長丁場は初。予定調和のきれい事ばかりでなく、人の気持ちは日々刻々変わる。驚きや感動だけでない切なさやり切れなさもそのまま撮りました」と感慨深げ。

 上司の宮田輝美プロデューサーは「震災をリアル体験し現場取材した私たち世代とは異なる30歳以下の学生さんと制作ディレクターの目線で描き描かれた等身大の作品」と話している。

 (畑山博史)