大阪府東大阪市在住の高校教諭で薬剤師の三木久子さんらが7月29日、「予防接種健康被害救済制度」に関する障害年金の不支給決定に対し、審査請求における口頭意見陳述を大阪府庁で行った。新型コロナワクチン接種後に副反応に苦しむ三木さんは同制度に申請したが、障害年金の不支給が決定されたことに不服を申し立てたもの。

三木さんは2021年9月、新型コロナワクチンを接種して一日後に意識を失い救急搬送され、翌日から歩行困難や心臓痛、めまい、発疹などの症状が出現。約2年半を寝たきりで過ごした。申請した予防接種健康被害救済制度「医療費・医療手当」は、「めまい症」による支給は認定されたが、「障害年金」は支給されなかった。
その理由として、東大阪市の健康保健所感染症対策課は「患っためまいによる運動機能障害と不安障害の状態については、その状態が固定していないと考えられるため」とし、24年12月に不支給の決定が下された。
大学教授、社労士、医師とともに制度運用問う
非公開で行われた意見陳述には、自身もコロナワクチンの副反応で苦しんだ関西学院大経済学部の安岡匡也教授、社労士兼行政書士の森田洋郎さん、三木さんの元主治医の長尾和宏さんが補佐人として同席した。
「障害の固定性」を判断する明確な基準の有無について市に質問したが、東大阪市側は「法律には明記されておらず、基準は存在しない」と回答。市は三木さんの症状を障害として認め、厚生労働省に審査を送付したが、同省の疾病・障害認定審査会が「障害とは認められない」と判断。不支給が決定された。
この点について三木さんは「市は厚労大臣の決定をどう受け止めているのか」と質問。市は「調査委員会は審査にかかる資料を取りまとめる立場であり、意義をいう立場にはない」と説明するなどしたという。
副反応について知ってほしい
安岡教授らは「同制度に関する審査請求は、厚労省の判断に直接異議を唱えることができず、処分を行う市町村も国の決定に基づいて動くだけ。審査請求にどれほどの意味があるのかを考えざるを得ない違法性は問われない仕組みになっている」と指摘する。
一方、三木さんは「なぜ表に立ち主張しているかは、生徒が『私も先生みたいに体がつらいが、親も他の先生も理解してくれない』と相談してきたから。子どもたちはなかなか自ら訴えることができない。副反応に苦しむ人がいるという現実を、少しでも多くの人に知ってもらいたい」と話していた。(加藤有里子)