「今日、笑って過ごせれば」出版 筆跡診断士、山上りるもさん
「がんになっても毎日を楽しんでいる二人がいることを、伝えていきたい」―。こんな思いから筆跡診断士事務所「オフィスりるも」代表、山上りるもさん(56)=大阪府和泉市=が自らの 卵巣がんを克服した体験と夫が、肺がん・脳腫瘍を発症した現在の日常を綴った体験記「今日、笑って過ごせれば」を出版した。今では二人に一人ががんになる日本社会。がんとどのように向き合い、より自分らしく生きていくかを考えさせてくれる啓蒙の書となっている。
「卵巣がんの発症と、選んだ道」「がんが教えてくれたこと」「寄り添い、支える側になって」―の3章構成。
大阪で生まれ育った山上さんは、神戸の短大を卒業後は結婚式やイベントなどの司会業、2004年には筆跡診断と出会い、2年後の2006年には筆跡診断士として忙しいながらも充実した日々を過ごしていた。そんな山上さんだったが、42歳のとき、卵巣がんの宣告を受けた。そして山上さんが選んだ治療法は、腫瘍摘出手術を受けたが、抗がん剤治療は選択せず、「がんと闘うのではなく、がんと向き合う」と、東洋医学に基づく自分に合った食事療法や免疫力を上げる生活習慣によってがんは完治した。術後5年目からは、講演会「『がん』が教えてくれたこと」をスタート。病気と向き合って見えてきたことや、食生活の大切さ、当時は言葉にできなかったさまざまな気持ちなどを、“一般人の体験談”として伝え、2025年2月に術後15年目に入った。
心から理解し合える関係
山上さんは術後、心の支えになっていた夫とともに日々、充実した暮らを送っていたが、今度は夫が肺がんと脳腫瘍を発症。免疫力で夫の肺がんは縮小したが、その後、上腕骨と脳への転移が見つかり、抗がん剤と東洋医学のハイブリッド治療を続け、自分の身体も人生も、他人任せにしない生活を続けている。山上さんは「夫婦でがんになり寄り添い、支える側になって初めて、心から理解し合えるようになった」という。
山上さんはこれまで筆跡診断の講師として筆跡心理学を取り入れたコンサルタント業務、企業等からの依頼による講演活動を全国で行ってきた。その一方で、全国初の試みとして大阪拘置所で一部の受刑者に筆跡心理学を通して、更生・教育にも関わってきた。この貴重な体験から山上さんは「生まれながらの犯罪者はいないこと、成長していく中のちょっとしたボタンの掛け違いで犯罪に手を染めてしまうことがあることを知りました。その掛け違いが起きてしまった原因は、誰もが抱えている孤独感や生きづらさにあるのではないか、と思いました」。
現在は「皆が笑って過ごせる、安心できる居場所を作りたい。そして、誰もが笑い合える場所をつくるためには、何よりもまず、私たちが日々を笑って過ごしていくことが大事です」と、キャンピングカーを購入し、「夫婦で全国を旅して、がんになっても毎日を楽しんでいる二人がいることを、あちらこちらで伝えていきたい。人生とは理想の未来にたどり着くための道のりではなく、幸せな1日の積み重ねなのですから」と話している。
ライティング、144ページ、価格1,320 円(税込)