【わかるニュース】激動の2024年、混迷の25年 地震で年明け、SNS列島席巻

 激動の24年を象徴したのは震度7の揺れが襲った元日の能登半島地震。翌2日には羽田空港で日航機と海上保安庁機が衝突。正月気分も早々に吹っ飛んだ。8月に宮崎で震度6があり、南海トラフの「巨大地震注意報」が初めて発表され、大阪などでコロナ禍以来の足止めも。自然災害はさらに続き、9月には復旧進まぬ能登半島を集中豪雨が襲った。

 SNSが大きな影響を及ぼした年でもあった。「闇バイト」は強盗殺人にまで拡大。日本のサイバー犯罪は統計史上最多となり、〝トクリュウ〟(匿名・流動型犯罪グループ)の新語も生んだ。
 選挙でもSNS旋風が巻き起こる。夏の東京都知事選で石丸伸二・前安芸高田市長と安野貴博・AIエンジニアが2位と4位に躍進。総選挙でも国民民主が大躍進し、院内のキャスティングボートを握る。極め付けは11月の兵庫県知事選。県議会で全員一致不信任の斎藤元彦知事が、失職・出直し選で再選されるサプライズ。「新聞テレビなどの旧メディアにネット情報が勝った」と話題になった。
 2025年の日本と世界はどうなるのか。予測してみたい。

〝混沌世界〟救ったShohei効果「対米依存体質」脱却が課題

 海外でも政治が大きく動いた年となった。米大統領選ではトランプ氏が返り咲いた。中国だけでなく、同盟国のEU(欧州連合)や隣国のカナダ・メキシコ、日韓台などの友好国にも容赦なく妥協を迫る「アメリカ第一主義」で地球規模の波風が起こりそうだ。
 今年は日米だけでなくG7(先進7か国会議)が大揺れ。英国は政権交代、ドイツも来春に総選挙の前倒しを発表し、結果次第で政権交代へ。フランスでは2度の首相交代。我が国と友好的なインドと韓国も少数与党に転落し政権運営はギクシャク、韓国は尹大統領の弾劾裁判が決まり職務停止や辞職の可能性も。
 こうした中、明るい話題を一手に振りまいたのは、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平。今季開幕直後に水原通訳の賭博・詐欺による解雇逮捕のトラブルに見舞われながら「50─50」(50本塁打50盗塁、これも流行語に)の大リーグ記録を達成、チームを世界一へ導いた。パリ五輪で日本は金メダル20個を含むメダル総数45個で、自国開催を除き最多の成果だったが、すっかりかすんでしまった。

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、ヤンキースタジアムで行われた2024年MLBワールドシリーズでニューヨーク・ヤンキースを破り優勝を祝った=2024年10月30日、アメリカニューヨーク州(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、ヤンキースタジアムで行われた2024年MLBワールドシリーズでニューヨーク・ヤンキースを破り優勝を祝った=2024年10月30日、アメリカニューヨーク州(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

万博ホントに大丈夫!?

 大阪の話題は4月13日に開幕する大阪・関西万博だ。NTT、住友、三菱、パナソニック、バンダイナムコ、吉本興業などのパビリオンが並び、170の国と地域が参加。ただ、「いのち輝く、未来社会のデザイン」というのがどうも「これが見どころ!」とハッキリ伝わらないのが難点。チケット販売も地元を中心に経済界が約半数を引き受けたが、一般販売は伸び悩む。
 私が大学生だった1970年の大阪万博は「人類の進歩と調和」がテーマで、これから社会で本格的に活動する団塊の世代にとって「自分を取り巻く日本の近未来はこうなる!!」という分かりやすさが示されていた。
 〝空飛ぶタクシー〟がおじゃんになり、アクセスは大阪メトロか主要ターミナルからのバス中心。仮に会期中に南海トラフ地震が発生すればぜい弱な交通インフラから取り残し必至。万博協会も災害発生後3日分60万食の非常食を備蓄している。解体取り壊し前提の各種パビリオンが地震・津波や風水害でどれくらいの耐久度を確保し、来場者を受け入れできるかも未知数だ。

「愛国保守派」各国で台頭

 世界は20世紀の東西冷戦終結で「グローバルサプライチェーン(原材料調達から生産、流通、販売までを国内だけでなく海外にも国境なく広げる)が当たり前になり、世界経済は発展する」と言われたが現実は真逆。ウクライナもパレスチナも停戦の糸口すら見つからない。その間にコロナ禍で傷んだ自国経済立て直しへ排他主義が横行。トランプ再選に象徴される「独裁的右派」の台頭に国民が熱狂する姿が自由主義国のあちこちで体制を揺さぶっている。

フロリダ州ウェストパームビーチのパームビーチコンベンションセンターで行われた選挙パーティーで、メラニア夫人と歩きながらジェスチャーをするドナルド・トランプ元大統領=2024年11月6日水曜日(AP/アフロ)
フロリダ州ウェストパームビーチのパームビーチコンベンションセンターで行われた選挙パーティーで、メラニア夫人と歩きながらジェスチャーをするドナルド・トランプ元大統領=2024年11月6日水曜日(AP/アフロ)

 対抗する中露に代表される専制主義の大国も悩みを抱える。プーチン露大統領は恒例の年末大会見で「我が国はドイツ、日本を抜いた」と順調な経済発展を強調したが、戦費拡大によるインフレの悪影響が進行。中国も経済政策失敗という 〝内政のツケ〟で離れた民心を台湾併合実現で呼び戻したいところだが、米国の経済制裁が怖くて手を出せない。習近平国家主席はプーチン大統領とも連携してトランプ米大統領とのトップ交渉で活路を見いだしたい。
 第3勢力で注目される新興国「グローバルサウス」はどうか? アフリカや南アメリカはもう少し時間が掛かる。当面期待されるのはインドとASEAN(東南アジア諸国連合)、オーストラリアなど。1国ではトランプ政治に対抗できず、互いに連携し交渉を有利に運ぶための組み合わせを模索することになりそう。
 創立80周年を迎える今の国連は常任理事国の大国同士が「拒否権」を出していがみ合い何一つ機能しない。対米交渉に頼みの日韓関係も尹大統領が去れば再び悪化する危険性大。まさに国際関係は〝一寸先は闇〟の手探り状態だ。

政治決戦は夏の参院選

 我が国の政治決戦は夏の参院選。衆院で少数与党に転落した石破内閣は、この選挙で敗れれば確実に退陣へと追い込まれる。ただ、現時点は与党有利。半数ずつ改選の参院で過半数は125。与党側非改選が75(自民62公明13)あるので、与党側改選65議席に対し50議席取れば過半数を維持できる。

自民党総裁選で新総裁に石破茂氏(右から3人目)を選出=2024年9月27日、東京(代表撮影/ロイター/アフロ
自民党総裁選で新総裁に石破茂氏(右から3人目)を選出=2024年9月27日、東京(代表撮影/ロイター/アフロ

 石丸新党の行方はSNS選挙の今後へのかぎとなる。石丸伸二氏から酷評された民放テレビ局などの既存メディアもSNS時代の選挙報道のあり方を練り直した成果を番組などで見せてくるだろう。
 日本経済の将来が再びアベノミクス時代に戻ることはもうない。低金利とジャブジャブの金融緩和で〝ゾンビ企業〟を生き永らえさせたことで、低賃金社会と国際競争力低下を招いた。少子高齢化の日本が進むべき道は構造改革によるデジタル化と人材確保への投資で生産性を上げるしかない。次世代の若者に選択される企業でないと将来性はない。
 年末に自動車業界の大手、ホンダと日産が経営統合の可能性を示し衝撃が走った。夏にはコンビニ大手「セブンイレブン」に外資から買収提案があった。円安で日本株は外国人投資家から見れば〝超お買い得〟に映り、有名会社でも合併や買収を避けて通れない時代に。
 今年の政財界課題は、一体となって「対米依存体質」を一刻も早く止めることだ。再登板トランプだけを脅威に感じても、米国自体が利己主義で生き残りを図るから〝第2、第3のトランプ〟が必ず登場してくる。日本外交は戦後一貫してまるで米国が宗主国(植民地に対する支配国)みたいな卑屈な態度で常に言いなりとなってきた。これからのパートナーはASEANやインド、韓国、台湾など同じ自由主義アジアの面々。さらにEU各国などを巻き込んで〝NOといえる日本〟を構築すること。貿易に関しても同じで、中国とのバランスを図り過度な米国からの押し付けに応じない体勢作りだ。
 日本国内の少子高齢化は着実に進むから、傷んだ地方や生活者を「どうやって支え、持続可能なシステムを構築できるか?」を与野党間で真剣に論議し政策遂行する必要性が高まる。団塊の世代が全員後期高齢者(75歳以上)になる「2025年問題」を避けては通れない。平均寿命が延びて長生きするようになり、年金受給年齢引き下げが現実味を帯びると、足りない労働力と収入不足を補うため就労可能年齢がジワリと延びる。そしていよいよリタイアすれば即介護問題が団塊世代ジュニアの40代に重くのし掛かる。座して死を待つ〝ゆでガエル状態〟が長く続いた日本の政治・経済も実は「もう待ったなし」だ。