来年区切りのプロデビュー30周年を迎える演歌歌手、美貴じゅん子(51)が大阪アメリカ村・ライブハウスBIGCATで開催の「大阪発流行歌ライブ」にトリで登場。新曲「海峡流れ星」をはじめ5曲を熱唱。途中、ステージを降りて丁寧に客席を回り、終演後は直接CD販売しファンと交歓した。
美貴は多くの女性演歌歌手同様、少女時代からカラオケ上手で賞賛されプロのレッスンを受け、コンテストで上位入賞してレコード会社からスカウト。ここまでは順風満帆だったが、1996年のプロデビュー以降ヒットが出ない。7年でリストラされ、以後は故郷の鹿児島には戻らず東京の日本料理店で仲居をしながらコツコツと歌の修業を続けた。自主制作したCDが他のレコード会社の目にとまり再デビュー。デュエット曲などさまざまな試みに挑むがやはり簡単には目が出なかった。
空白期間をへて3年半前に再デビュー。今度は歌のうまさでは定評のある細川たかし(74)一門に加えてもらい、民謡出身の杜このみ(35)彩青(22)、一昨年の日本レコード大賞最優秀新人賞・田中あいみ(24)ら歌唱力のある後輩とともに初心に戻り切磋琢磨しあって実力を養った。
新作CDは2曲とも作詞・石原信一、作曲・岡千秋、編曲・伊戸のりおのヒットメーカートリオの作だが「海峡流れ星」が本格的演歌なのに対し、カップリング「三日月まいご」はドレスで歌いたくなるワルツ調の歌謡曲テイスト。まったく味付けが異なる2作に、最初は「どちらをメインに?」と美貴ふくめ関係者は大いに悩んだ。前々作のカップリング曲「桜色のオ・ヴォワ」がピアノバックのシャンソン調で「有線演歌お問い合わせランキング」で「あれは誰?」と話題になった事から、美貴は「三日月まいご」を推した。しかし作詞の石原から「『海峡流れ星』は前作『放浪かもめ』の続きなんだよ」と聞かされ、美貴も壮大な物語性に感動、組み合わせが決まった。
「流行歌ライブ」では2曲とも歌ったが、客席は年齢を感じさせない圧倒的歌唱力に驚いた反応。生歌を聞いて感じさせるのは発声、表現力とも3年数カ月前の再々デビュー時より数段成長している点。ごまかしが効かない細川一門の実演ステージで鍛えられ、結果的に休眠期間が長かった分、プロ歌手として歌声を温存できたことが今日の好結果につながったとしたら、何とも不思議な巡り合わせだ。
年が明ければ一門コンサートが2月2日・東京明治座はじめ各地で行われる。弟子も手分けして共演、さまざまな事を実演で学び成長する。美貴は「人生は〝負けたら終わり〟ではなく〝止めたら終わり〟。けっして諦めず何度でも挑戦する限り、終わりはありません」と自らの生き様を語った。
(畑山 博史)