北区・大淀地域に新たな交流の場を  クラフトビール専門店「クラフトビアベース」

 大阪市北区の大淀地域で注目を集めるクラフトビール専門店「クラフトビアベース」。代表の谷和(たにあい)さんは、自身の経験と情熱をもとに地域密着のビアカルチャーを推進し、9月に開業したグラングリーン大阪に「クラフトビアベース リーフ」を出店。同ブランドにおいて、アンテナショップのような役割を目指す。うめきたすぐ近くの自社の醸造所で作ったクラフトビールを新鮮なまま提供。品質管理に徹底してこだわりながら、地域の人々が気軽に集い、ビールを通じて文化や交流の場として親しまれる場づくりを目指す谷和さんに、これまでの道のりや今後のビジョンについて話を聞いた。

「飲食業との出会いとビールへの関心がスタート地点」

 香川県出身の谷さんは「クラフトビールに初めて興味を持ったのは約20年前です」と振り返る。大手メーカーのビールが好きで、クラフトビールの存在すら知らなかったという。大学での授業で学んだ「新規業態開発論」がきっかけとなり、新しいビジネスモデルに魅力を感じた谷さん。その後、ベーグルとコーヒーの店で働き始め、飲食業の面白さに引き込まれていく。やがて、ビールにも興味を持ち、日本ビール協会のビアテイスターとビアジャッジの資格を取得した。

ベルギービール専門店「ドルフィンズ」での経験

 2005年から大阪のベルギービール専門店「ドルフィンズ」で働き始め、ビールの品質と提供方法の大切さを徹底的に学んだ谷さん。「デュベルはじめベルギービールは、作り手の意図を尊重した独自の注ぎ方が求められるんです」とビールの奥深さに気付かされ、最高の状態で提供するために細やかに工夫することの重要性を説く。この経験が、クラフトビールの正しい提供方法と品質管理にこだわる今のスタイルの基礎となった。本場ベルギーにもたびたび視察に訪れ、地産地消の考え方と地元のビールを好んで楽しむ文化形成のあり方に魅せられて、クラフトビールの作り手となる道を進んでいった。

クラフトビアベースの思いを語る谷和さん(右)、大淀地域で幅広い人脈を持つ大淀中郵便局長の岡野正裕さん

地域に根ざした「クラフトビアベース」の立ち上げ

 独立後、紆余曲折を経てビールが主役の業態店舗を梅田近くで5店舗まで拡大していったが、コロナ禍がやってくる。売上も厳しい状況が続き、スタッフも店をやっていくことで精一杯いっぱいの状況となり「本来やりたかったのは、ビールを正しく広めること」と大阪駅前第一ビル内の「クラフトビアベース バド」のみを残し、全ての店舗を休業することに。するとスタッフ達がネットショップを作って販売を始めたり、好循環が生まれる兆しが見え、クラフトビール専門店「クラフトビアベース マザーツリー」を北区の大淀地域にオープン。同敷地内の醸造所で作ったクラフトビールを品質管理に徹底してこだわり、新鮮なまま提供。そこで、地域の企業や個人と強いパイプを持つ大阪大淀中郵便局長の岡野正裕さんが地域のステークホルダーとの間を取り持ち、人々が集う場づくりに尽力した。地域の人々がビールを片手にリラックスできる空間で、新しい出会いやつながりが生まれる場を目指しており、地元住民が訪れるたびに心地よさを感じられる環境づくりに力を入れている。

世界的なビール品質審査員としての視点と大阪万博に向けた展望

 谷さんは、世界的なビール品質審査員(ワールドジャッジ)としても活躍している。国内外のビール審査会に参加し、ビールの品質を審査するワールドジャッジの経験を通じて、日本のクラフトビール業界の課題と解決策を見出し、それを国内に還元している。

 2025年に大阪で開催される万博にも期待を寄せる。「大阪万博は、クラフトビール文化を発信する絶好のチャンス」とし、直接万博に参加することは難しいものの、グラングリーン大阪に出展した「クラフトビアベース リーフ」が大淀のクラフトビール発信のアンテナショップになることを目指し、観光客の増加を見据えた店舗体制の強化に力を入れている。英語力を持つスタッフを増員し、海外からの来訪者にも対応できる体制を整えることで、クラフトビールを通じた文化交流をさらに広げ、地域経済への貢献も目指す。

 谷さんの『クラフトビアベース』は、クラフトビールの提供を通じて地域とのつながりを育む場であり、北区大淀の人々の新たな「つどいの場」としての役割を果たしている。品質管理を徹底したクラフトビールは、地域住民や観光客にとって新鮮で心地よい体験を提供している。日本と世界を結び、クラフトビールの魅力を広め続ける谷さんの挑戦は、これからも多くの人々に愛されていくだろう。

■クラフトビアベース リーフ/大阪市北区大深町6-38 グラングリーン大阪 北館2階 204