最多4カ国語の字幕を背に国連本部などで上方落語を演じ文化庁文化交流使も務める上方落語家、桂小春団治(66)が毎年秋に開いている大阪での独演会を30日夜に淀屋橋・朝日生命ホール(368席)で開催する。
コロナ禍で出来なかった年を除き、唯一の弟子・治門(42)と若手噺家1人、さらに東京から旬の芸人を呼ぶパターンで開催。自身は「創作と古典を1作ずつネタ降ろしする」をノルマとして取り組んでいる。今年は先日NHK新人落語大賞優勝の桂三実(31)、ゲストはウクレレ漫談・ぴろき(60)と斬新な顔ぶれ。小春団治は「創作落語は自作の『普通の境界線』、古典は『あんま炬燵(こたつ)』。怒りや笑いなどのポイントすなわち境界線が〝昔と変わってきた〟とよく言われます。このあたりの変遷を日本人の考え方をベースに演じてみたい。あんま、という言葉は差別用語でも何でもない。しかしこのネタは盲人が登場することで最近は演じる方がめっきり減った。そこで私は晴眼者のあんまを登場させることに。さてどうなりますやら」といたずらっぽく。
来春からの大阪・関西万博開催時期をにらみ、得意の「外国語字幕落語」イベントを週2席程度、インバウンドを対象に〝夜の娯楽〟として開く計画を練っている。「演題は『お玉牛』と『皿屋敷』の2本が14カ国語の字幕ができあがっている。僕自身が英語で語る落語を演じた事もあるのですが1カ国語しか伝わらない。その点字幕なら事前に選んで4か国語映写できるので外国人客に合わせ言語そのものも選べる。『お玉牛』がおおげさな身ぶり手ぶりが使えるネタ、逆に『皿屋敷』は怪談仕掛けなので低い声で恐怖感を表現できる。字幕を出してくれるスタッフとの息をしっかり合わせて日本語で聞く方も面白く鑑賞できるように完成度を上げた。インバウンドの方にぜひ大衆芸能文化を感じてほしい」と張り切っている。
古典落語の掘り起こしに挑む理由について「師匠の三代目(桂春団治、16年に86歳で死去)から多くのネタを教わった。当時は〝物まねになってはいけない〟と多くのネタに封印した時期もあったが、この歳になって〝師匠の芸が合う歳回りになってきたな〟と感じます」とシミジミ。
(畑山 博史)