シリコンバレーバンクが破綻
米国はこれまで高いインフレを退治するべく金融引き締めを断行してきた。今月14日に発表の米国インフレ率(CPI=消費者物価指数)は、前年同月比の上昇率6・0%(市場予想と同値)となった。まだまだ高い水準ではあるものの前月の6・4%を下回り、インフレ鈍化の兆しを感じさせるものだった。
しかしこの発表とは別に“SVB(シリコンバレーバンク)破綻”というニュースが米国の金融市場を動揺させた。これらの出来事は、米国の政策金利の行方、株価にどう影響するのか、市場の動きをまとめてみた。
SVB(シリコンバレーバンク)の倒産は2008年のリーマンショック以降で最大、過去2番目に大きな規模だ。しかし、この破綻が全米に及ぼす可能性は低いと見られているという。理由として、同社の顧客がシリコンバレーのスタートアップや新興ハイテク企業に偏重していたことが挙げられる。この偏りは以前より指摘されていたようで、欠点を部分的に補っていたはずの債券投資も金利上昇により含み損を膨らませた。個人的にはいわば“投資のプロ”も今の相場は難しいんだと思った。このほかにも、シルバーゲート銀行、シグネチャー銀行も倒産しており、共に仮想通貨関連の業務に力を入れていたという。
ちなみに、JPモルガン、バンクオブアメリカなどのメガバンクは個人の小口預金も多く、取引企業はハイテク以外に石油天然ガス、金融、ヘルスケア、政府、製造業、小売業など多岐に渡っているようだ。
ところでSVBの預金者はどうなるのか。当然、金融不安から預金者は同社にある預金を引き出す。これに応じてどんどん現金を渡していくのだが、次第に足らなくなった資金は含み損の債券を損切りしてでも渡さなければならなくなる。
そこで、SVBはチャプターイレブン(日本でいう民事再生法)を申請。同社に代わって米連邦預金保険公社(※)が上限25万ドル(約3300万円)までを保証する形となったが、その後、さらに上限を撤廃し、無制限とした。これにより同社の預金者の資産は守られた。
これを深刻に受け止めたFRB(連邦準備銀行=米国の中央銀行)と米財務省は、国債を通じて民間銀行に現金を貸し出す制度(ディスカウントウィンドウ)の大幅緩和を行った。つまり、民間銀行が保有する債券に含み損があったとしても国債の額面と同じ金額分を担保として貸し出しできるようにした。これをBTFP(バンク・ターム・ファンディング・プログラム=緊急融資枠)という。期限は1年間。
この流れから、FRBの今後の利上げがどうなっていくのか。今まさにターニングポイントというわけだ。
(※)米連邦預金保険公社(FDIC)=預金保険機構。米国の金融機関が破綻した場合に、一定額の預金などを保護する預金保険制度を運営している。