うまみ強く絶品 純国産の馬刺し
馬肉は「さくら」と呼ばれる。空気にふれるとヘモグロビンが反応し、肉が桜色になるためだが、実際の「馬刺し」となった生の切り身はもっと濃い鮮やかな赤色で、食欲を大いに刺激する。しかも「馬王」の馬刺しは、新鮮で珍しい純国産馬(流通量が非常に少なく、全体の数%に過ぎない)で、味が良いと評判の絶品だ。
最大の産地は熊本。カナダなどから輸入した農用馬を肥育して食用にしているが、「馬王」が輸入馬と並んで提供する国産馬は鹿児島県知覧町の「佃牧場」で育てられているポニー。毎週、木曜に福岡県八女市で肉にされ、翌日には店に運び込まる。一度も冷凍していないため、柔らかく臭みもない。肉質はきめ細かく、うまみが強い。「和牛がおいしいのと同じで味は絶品」と、運営する「N・I」の河村則夫社長は胸を張る。
「何か他にない珍しい料理を」と考えていた河村社長がある会合で馬肉を扱う人物に出会ったのが始まりだった。「これだ」と上新庄に店を構えたのが8年前。昨年、立ち退きを機に、阪急十三駅から徒歩2分という絶好の場所に移ってきた。現在、馬肉専門店は堺筋本町店と2軒。経営する他の居酒屋でも馬肉料理を出しているが「大阪の食文化に馴染みがなかったため、周知に時間がかかった」と振り返る。そして〝コロナ明け〟には予約で満席になる日も増えたという。
トッピング
「馬王」では、ダイエットや健康に興味のある女性や筋トレ男性のリピート率が高いという。理由は明白。馬肉は栄養価が高く、滋養強壮、健康増進に大きな効果を期待できるからだ。
他の畜肉(牛、豚、鶏)に比べ、カロリーから脂肪、コレステロールに飽和脂肪酸まで、すべてが低いうえに、高タンパク質でミネラルも他の肉の数倍と豊富。さらにビタミン類も多く含有しており、薬膳料理といっても差し支えないほどだ。
国内で最も馬肉を消費するのは、圧倒的に熊本である。ちなみに熊本で馬肉を食べるようになったのは、熊本城主だった加藤清正が「朝鮮出兵」時に食糧難に陥ったことで、馬肉を食べたのが始まりだといわれている。熊本に続くのが福島で、それに長野を加えた地域が三大馬刺しの産地である。
ウマが馬刺しで生食されることが多いのは、反芻(すう)動物でないため、大腸菌O157のリスクが少なく、奇蹄(きてい)類で口蹄疫のリスクが低いとされているためだ。
ところで、フランスでは一般に馬肉を食するが、米国は「食べない」。法律で食用を目的としたウマの屠畜(とちく)を禁止しており、食材となるウマはカナダやメキシコで処分されている。禁止された背景にあるのは「カウボーイ文化」だとする指摘が強い。
大衆馬肉酒場 馬王 十三店
電話06(4862)6333
大阪市淀川区十三本町1-9-21
営業時間 17:00~00:00
日曜定休(月曜祝日は日曜営業で月曜定休)
運営「N・I」(河村則夫社長)