環境整備や規制緩和で海外資本が増加
政府は6月4日、大阪府と大阪市を「金融・資産運用特区」に指定すると発表した。この特区とは何か。指定されることで大阪はどのように変わるのか解説する。
政府、金融庁は2023年12月、国内外の金融・資産運用会社を呼び込んで、地域の産業・企業が発展しやすい環境を整備しようと「資産運用立国実現プラン」を打ち出した。
「金融・資産運用特区」は特定の地域に金融・資産運用サービスを集め、高度化と競争力強化を促進しようとする取り組みで、実現プランの主要施策の一つに位置付けられている。大阪以外に指定された都市は東京、福岡県・福岡市、北海道・札幌市。
岸田首相、NYで新規参入求める
「資産運用立国」については、岸田文雄首相は昨年9月の訪米中、金融関係者や経営者で構成される「ニューヨーク経済クラブ」で、日本への参入を求める演説をしている。「日本独自のビジネス慣行や参入障壁を是正し、新規参入者への支援プログラムを整備する。あわせて、バックオフィス業務のアウトソーシングを可能とする規制緩和を実施する。また、海外からの参入を促進するため、資産運用特区を創設し、英語のみで行政対応が完結するよう規制改革し、ビジネス環境や生活環境の整備を重点的に進める」(原文ママ)
開業手続き英語対応 投資家向けビザ創設も
特区では、金融・資産運用事業者が参入しやすいよう、環境整備や規制緩和が行われる。具体的には、以下4つ。一つ目は、日本法人設立に伴う手続きを英語で行えるようにする。2つ目は、これまで資産運用会社が英語で登録手続きなどができる拠点は東京にしかなかったが、24年度中をめどに特区内に設置する。3つ目は、特区内のスタートアップを支援することを要件に投資家向けビザを創設する。4つ目は、外国人が銀行口座開設する際の手続きを迅速化・円滑化するといった措置を講じる―としている。
外資による投資・買収で日本人の富、流出を危惧
大阪府・市では「国際金融都市構想」を掲げ、「2025大阪・関西万博」の開催を一過性ではなく、スタートアップや大学などがチャレンジできる環境を目指している。このため、規制改革などを実現し、海外投資を呼び込んで金融機能の強化を図ろうとしている。
藤井聡京都大学大学院工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学、レジリエンス実践ユニット、ユニット長は、「大阪における資産運用特区は、海外の金融関連企業などの進出を促し、外資が日本企業に投資しやすくするものだ。具体的には、日本企業への投資の主要は『株式買収』だ。短期的には投資・買収された企業の動きが活発化し、経済が拡大したようにも見える。しかし、 日本企業への投資や買収は、日本の富が外国に吸い上げられ、日本人の所得が減少していくということを意味する」と危惧する。
大阪府・大阪市では、すでに「金融系外国企業等に係る地方税の課税の特例制度」を設け、外国企業に対して、地方税(法人市民税)の減税を実施している。