阪急3線のハブターミナルとして利便性の高い十三が生まれ変わろうとしている。駅前ではスーパーや市立図書館が入ったタワーマンションの建設が進み、河川敷では船着場や集客施設が整備される。さらに、阪急の新線や駅直上に高層ビルの建設も検討されている。十三の未来予想図を展望した。
「住みたい街」の上位に
十数年来、置き去りになっていた十三のもと淀川区役所跡地一帯で、「官・民・学」による複合開発が始動している。東側敷地(約7300平方㍍)には阪急阪神不動産が地上39階建て、総戸数712戸のタワーマンション「ジオタワー大阪十三」のほか、市立図書館、保育学童施設、スーパーマーケットなどを整備。西側敷地(約1600平方㍍)には学校法人履正社が運営する医療系専門学校が開校する。
同社の開発担当者は「将来的に、十三を西宮北口と争う〝住みたい街ランキング〟の上位に押し上げたい」と展望。「街は人が住むことで活気が出る。十三を〝住む街〟にする起爆剤とし、阪急沿線の核として育てていきたい」と語気を強める。
万博会場につながる船着場
国土交通省近畿地方整備局は、十三駅からほど近い淀川の河川敷に「十三船着場」の整備を進めている。地震などの災害で陸上交通網が麻痺(まひ)した際に、救援物資や資材などを船で運ぶ拠点とする計画だ。 同船着場は2024年度中の完成を目指しており、25年開催の大阪・関西万博会場や大阪市内中心部、京都方面を船で結ぶ発着場としての活用も検討されている。昨年9月には斉藤鉄夫国土交通相が現地を視察。斉藤氏は「非常に魅力的な計画。関西の観光の目玉になってもらえれば」と期待を寄せる。
河川空間のオープン化
地元の淀川区役所も船着場を含めた河川敷を魅力ある空間にすべく、協議を重ねている。岡本多加志区長を座長とする「淀川河川敷十三エリア魅力向上協議会」が発足。同エリアのにぎわい作りを含めた整備・運営を行う民間 事業者を公募型プロポー ザルによって募集し、「RETOWN・類設計室・One Osaka リバークルーズ事業共同体」が選定された。
同共同体が提出した事業計画によると、河川敷には広場、遊歩道、イベント施設などを整備し、バーベキューやアウトドアレジャーが楽しめる。堤防の幅を盛り土によって広げ、堤防上にはオープンカフェなどの飲食店が立ち並ぶ予定だ。
実績豊富な開発事業者
RETOWN社は公共空間に特色ある施設を開業し、街に新たな風を吹き込むことを得意としている。大正区・尻無川沿いの水辺を活用した複合施設「タグボート大正」や生野区の廃校を再生したコミュニティースペース「いくのパーク」などが有名だ。
同社の岡野正太郎取締役は「十三は梅田からも近く、阪急3線のハブターミナルとして集客のポテンシャルが高い。淀川河川敷に多世代が交流し、にぎわいを生み出す事業を展開していく」と話す。
区役所が策定した「淀川区将来ビジョン2025」によると、世帯数は市内24行政区最多だが「10代未満と30代が転出超過で、子育て世帯に住み続けたいと思ってもらえる街づくりが課題」と分析している。同区政策企画課の中島建係長は「事業者と連携し、新たな十三の魅力を発信していきたい」と意気込んでいる。
十三駅直上の高層ビル、地下に新駅を整備
最後に、阪急電鉄の新線構想にも触れておこう。JR新大阪駅と阪急十三駅を結ぶ「新大阪連絡線」と、十三駅とJR大阪駅の地下ホームを結ぶ「なにわ筋連絡線」を整備する検討が進められている。新大阪駅周辺地域まちづくり検討部会の資料によると、十三の新駅予定地は、既存駅の北側(神戸線、宝塚線の間)で地下ホームを想定している。
阪急電鉄の新たな路線は「なにわ筋線」に直接乗り入れる予定で、実現すれば阪急のターミナル駅である「十三」から、関西国際空港や新大阪駅へのアクセスが格段に向上することになる。
同資料によると、阪急電鉄は、40年を目処に十三駅の直上に高層ビルの建設を検討している。駅の北側・南側にある3カ所の用地を含めた一体的な都市開発プロジェクトを展開し、にぎわいや交流機能を強化しようという考えだ。
今年はうめきた2期の先行まちびらきがあり、キタエリアに注目が集まっている。うめきたから至近距離に位置する「十三」もまた、スポットライトを浴びている。