84歳と最高齢の笑福亭円笑 3.26の誕生日に落語と講談リレー寄席

 上方落語家で唯一の正統江戸落語を噺し、高座活動を続ける現役落語家としては上方で桂福団治より7カ月生まれが早く、3月に最高齢84歳、人生7回目歳男と記録ずくめが4代目笑福亭円笑。

 傘寿(80歳)記念落語会の翌年から、毎年誕生日の3月26日夜に大阪・南森町の協会常設寄席「天満天神繁昌亭」で実験的でユニークな夜席に挑戦し続けている。

7度目歳男で「珍品根多落語会」を開く笑福亭円笑

 今年は上方講談協会名誉会長・旭堂南鱗(73)をゲストに前半を円笑、後半を南鱗が語るリレー式で、江戸でもめったに高座に掛かることのない「吉住万蔵」を演じる『円笑う珍品根多落語会』を開く。「吉住万蔵」は、円笑が尊敬してやまない江戸落語の名人・六代目三遊亭圓生(1979年、79歳で死去)が講釈師・四代目邑井貞吉(65年、85歳で死去)から「教えられた」とされる。物語が長く登場人物も多い上、内容的にしがらみや横恋慕など暗く笑いどころが少ないことから、圓生自身も「生涯で3度ぐらいしか高座に掛けなかった」と言われる珍品。

 戦前40年生まれの円笑は「私が圓生師匠のこのネタを聞いたのは64年秋の東京・人形町の末広亭。当時の私は若く、登場人物の思いがまだ理解できなかった。邑井先生はご健在当時、生で聞かせて頂いた事がありますが大変上品なしゃべり方で感銘を受けました。長い全編で前後半に分けて演じられる事が多く、南鱗先生に相談したところ〝よし、ワシがやるわ!〟と快諾して下さった。元が講談のネタですから、リレーで違いをじっくり聞いて頂きたい」と説明。

珍品ネタ「吉住万蔵」をリレー形式で演じる旭堂皆南鱗

 トリの円笑「嵐民弥」は、上方落語では「いいえ」と呼ばれる艶笑ネタ。女形役者が旅の途中で訪れた家でそこの母娘と男として間違いを犯すが、オチが笑える展開。他に、桂小文三と桂三四郎も出演する。

 老いて益々盛んな円笑は「若い頃から5夜連続高座を東西で行うなど体力には自信がありました。今も京都や名古屋で独演会を定期的に開いています。今では江戸落語を上方でも聞いて頂く機会は増えましたが、休眠状態の珍品ネタはほとんど知られていない。残る命は東西落語の架け橋となって、若い人々に伝統話芸の面白さを伝え続けたい」と意欲。

 午後6時半開演、入場料3000円(当日券3500円)。

 (畑山 博史)