【外から見た日本】ウクライナ侵攻から見えるもの 武器供与で世界は何をしてしまったのか?

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

 2023年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻から1年が経ちました。その間の世界はロシアの暴政に驚き、振り回されました。各国が軍事費の増加を決める中、日本もGDPの2%にすると決定し、42兆円という額の予算を立てました。欧州各国も近い将来、国防費をGDPの2%程度まで引き上げると決めています。

 並行してこの1年、ウクライナへ世界各国から大量の武器や兵器が供与されました。結果、ウクライナを善戦させることには成功しましたが、結局、世界はウクライナに何をしてきたのでしょうか?

 2022年のウクライナのGDPは30.4%減少し、経済規模は35~40%縮小。首都キーウを含め、攻撃・破壊された都市は全土に渡り、市民も含めて多数の人が亡くなっています。そして未だに戦闘が終わる気配はありません。

 この間、ロシアの動きや状況を見守っていた国は幾つかあります。それらの国が何かを仕掛けて来たら、あなたはどうしますか?

 もし、気球を飛ばして世間を騒がしている国が日本を攻撃したら? 台湾で軍事衝突が起こったら? 考えたくなくても、そんな事を考えなければならない時代になっていると感じます。

 ウクライナを見る限り、日本が攻められても積極的に加勢してくれる国はないことが想像できます。日米同盟があるので米国は何かをしてくれるかもしれませんが、自衛隊が専守に徹して日本人が血を流さないのに、米兵士が代わりに血を流してくれるとは思えません。しかも、それを求めるのはあまりに都合が良過ぎる気がします。

 ウクライナ以外で今、危険なのがイスラエルとイランです。両国の緊張はどんどん高まっており、もし2国が開戦したら、そのまま第3次世界大戦に突入してもおかしくない状況です。

 台湾海峡でも無数の軍事シミュレーションが繰り返されています。地政学的に重要な役割を担っていたトルコも先日の大地震で役割を全う出来なくなっています。

 日本のメディアだけ見ていると、このような危機感は伝わらないかもしれませんが、現実の世界は緊迫した状況が繰り広げられています。

 戦争はある面、ただの暴力であり、許し難い行為ですが、一方、経済であり、ビジネスでもあります。軍需産業は莫大な利益を出し、関連分野への波及効果も高く、戦後復興にも大きなビジネスチャンスが生まれます。過去の戦争がそうであった通り、この戦火も同じであり、これからもその通りであるでしょう。

 世界がそうした情勢にある中、情報を集め、精査し、取るべき道を選択し、進んでいく術を身につけなければいけないのが現代です。学校選びも、就職先も、付き合う友人や、構築すべきネットワークも、先を見据えて行動しないと、目の前の事だけに振り回されていては生き残れません。

 自分で判断して決定する能力が問われる時代。そういう厳しい現実を突きつけたのが今回のウクライナ侵攻だと感じます。

【プロフィル】 Spyce Media LLC 代表 岡野健将 米ニューヨーク州立大ビンガムトン校(経営学専攻)を卒業し、ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後、現地で起業し「世界まる見え!テレビ特捜部」「情熱大陸」「ブロードキャスター」「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、ディスカバリーチャンネルやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市でセミナー講師も担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。