コミュニケーションライター/黄本恵子
相手が「話をちゃんと聞いてもらっている」と実感できるような聞き方ができている人は少ないようです。
話を聞くとき、次のような行為をしていませんか?
①パソコンやスマホ、テレビの画面を見ながら相槌を打つ
②「つまり、こういうことだよね」と話をまとめる、決めつける
③「そういえば私も~」と自分の話にすり替える
④気になったことを途中でアレコレ質問する
⑤「こうすればいいんじゃない?」などアドバイスする
これらは、相手の話す気を削いでしまう聞き方です。
①や②は、相手の話を単なる情報伝達の手段と考えている人がやりがちな聞き方です。
③のような『会話泥棒』は、人からすごく嫌がられてしまう行為と言っていいでしょう。
④は、自分の聞きたいことだけを聞いていて、相手が本当に話したいことを邪魔している可能性が高いです。
⑤は、親身になっているように思えて、相手の気持ちをきちんと受け止めているとは言い難いです。
話を聞くときは、『ペーシング』を意識しましょう。ペーシングとは、相手をよく見て、相手に合わせて会話し、心を通い合わせる心理テクニックです。
ペーシングは3種類あります。
①声のペーシング
相槌の際、声の音量やスピードなどを相手に合わせます。
●相手が大きな声で話すなら、自分も大きな声で。
●相手が小さな声で話すなら、自分も小さな声で。
●相手が早口で話す人なら、自分も早いスピードで。
●相手がゆっくり話すなら、自分もゆっくりと。
声を合わせることで、「この人とはなんだか波長が合うな」「話しやすいな」と思ってもらえます。
②体のペーシング
相手と体の動きを合わせることで波長を合わせていきます。そっくりそのままやると「真
似されている」と思われます。まずは『姿勢』のペーシングからチャレンジしてみましょう。
・相手が背筋をピンと伸ばして話すなら、自分も背筋を伸ばす。
・相手が背を曲げて話しているなら、自分も背を曲げる。
・相手が深く椅子に腰掛けていたら、自分も深く腰掛ける。
・相手が浅く前のめりに座って話をするなら、自分も浅く前のめりに座る。
姿勢を合わせることで、相手の方の話しやすさがぐんと増します。聞く側も、相手の話を受け入れやすくなります。
③言葉のペーシング
相槌の際、ときおり相手の使った言葉をそのままオウム返しします。『バックトラッキング』とも言います。
「お客さんに怒られて、私、ほんと悲しかった」
「悲しかったんだね…」
バックトラッキングがあると、話を熱心に聞いてもらっている感覚が得られます。特に〝感情を表す言葉〟(悲しい、つらい、腹が立つ、うれしい、など)をそのまま返してもらえると、「この人は私の気持ちを分かってくれている」と、より強く感じることができます。
ペーシングを心がけると、相手をよく見て、注意深く聞くようになります。また、相手の声色、表情や仕草から、いつもと違う感じや、感情の変化に気づくこともできます。
まずは、相手の話す気を削いでしまう聞き方をしないようにすることから始めてみてください。
黄本恵子(きもと けいこ)
大阪市出身。1980年生まれ。関西大学社会学部卒業。心理学について学びを深め、人間関係に悩む人々のカウンセリング業務に従事。その経験を活かし、家族間や男女間のコミュニケーションについての記事を大手WEBマガジンにて執筆。ビジネス書の編集・執筆協力にも多数携わる。米国NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー。
〈メディア出演〉ニュース番組『新・情報7daysニュースキャスター』に出演。「高齢者の親に免許返納を促す伝え方」についての記事が反響を呼び、取材を受ける。朝の情報番組『ビビット』に出演。「2歳児ができること」について紹介した記事が取り上げられる。