
大阪・関西万博の開催まであと1カ月ほど。まだまだネガティブなニュースが多く、実際に万博で何が見られるのか、体験できるのかがわからない状態では、それも仕方ないでしょう。
今回は万博について、取材からわかったことを紹介します。鶴見緑地での花博(1990年)以降、全ての万博に行った万博エキスパートの二神敦さんにも話を聞き、他では聞けない内容です。(岡野 健将)
事前予約は必要なし?
今回の万博。パビリオンへの入館には事前予約が必要だと思っていませんか。実はその情報は必ずしも正しいとは言えないのです。
「並ばない万博」を目指し、取り入れられた予約システムが不人気なのはご存知の通り。しかし、日本関係のパビリオン以外の大部分は、予約なしで入館できます。予約システムに含まれる海外パビリオンも並ぶことをいとわなければ予約は不要。直接、いくつかの国に確認しましたが、「予約すれば並ばずに入れるが、予約なしでも問題ない」との回答。予約システムに含まれないパビリオンはそのまま問題なく入館できます。
大ざっぱに言えば日本関係のパビリオン以外は予約しなくてもいいということです。
過去の万博でも予約システムの利用があったそうですが、実際にはうまく機能しなかったようです。また、海外パビリオンの中には、行列が人気のバロメーターなので「並ばない万博」自体に否定的だそうです。
ただ、「予約なしで何時間も列に並んで待たされるのは嫌」という人に、参考になる情報があります。これは日本国際博覧会来場者輸送対策協議会の資料にも掲載され、二神さんも過去の経験から同意している内容です。
それは、入場者の時期別の混み具合です。私は開催直後の4月からゴールデンウィーク、夏休みが混むと思っていましたが、実は開催直後は様子見する人や、運営面で問題が起こりやすいなどの理由から、入場者数はそこまで伸びないようです。夏休みも暑さを避けるため、テーマパークのように混まないと予想されています。
逆に最後の1カ月はSNSで刺激されたり、チケット購入したまま行けていない人が押し寄せ、最も混雑する可能性が高いようです。
ただ、今回は会場へ入場するには事前に来場予定日を指定するので、会場内が人であふれかえることにはならないはず。

全部見るなら10日はかかる?
二神さんに聞いた過去の万博と今万博の違いをいくつか紹介します。大屋根リングで大きく見える会場ですが、広さは過去の万博と比べると小ぶり。それでも全部見て回ろうと思うと約10日必要になるそう。1日で見るパビリオンの数は2〜3館程度ならゆとりを持って回れ、頑張れば4〜5館は回れるでしょう。
また、オープン時に完成していないパビリオンがあるのは当たり前で、万博では珍しいことではないようです。特に訪日客の多くがスーツケースを持って会場に来るそうで、現地到着日に空港から直行、最終日は会場から空港へ直行、と会場での滞在時間を最大化させようとするので、スーツケース問題が発生するはずです。

予想入場者数の2800万人は優に超える?
大阪府と市が実施したアンケートで「万博に行きたい」と答えた人が35%だったという結果が発表され、批判のネタにされていますが、裏を返せば中身がよくわからないのに35%もの人が行きたいと言っている方が驚きます。
日本の人口1億2千万人の35%は4200万人。それにリピート客や海外からの来場者を加えると予想入場者数の2800万人は優に超えそうです。万博での楽しそうな写真がSNSにあふれ、メディアが手のひらを返して楽しげに騒げば、さらに行きたくなる人が出てきます。
最後に、二神さんからアドバイスが。「万博は国際博覧会。日本のパビリオン以外を見ることが万博本来の意に添う。国内にいて160もの国と地域にふれる機会は他にない。ぜひプチ世界旅行を楽しんでほしい」
海外に長く住んだ私の経験から言えることは「どこに行った」とか「何をした」より、異国の考え方や生き方、文化や歴史、食にふれることこそが大事です。そんな機会が身近にやってきたわけですから、万博には参加しない理由はないでしょう。
ということで、Let’s ENJOY the EXPO 2025.

【プロフィル】岡野 健将
米ニューヨーク州立大ビンガムトン校卒業。経営学専攻。NY市でメディア業界に就職後、現地で起業。「世界まるみえ」「情熱大陸」「ブロードキャスター」「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、ディスカバリーチャンネルやCNAなどのアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。
