【わかるニュース】「大阪・関西万博」は大丈夫? 五輪と比較 「成功間違い無し」!?

2025年「大阪・関西万博」会場上空からのイメージ(画像提供:2025年日本国際博覧会協会)
2025年「大阪・関西万博」会場上空からのイメージ(画像提供:2025年日本国際博覧会協会)

 ポスト・コロナ最大の国家イベント「大阪で半世紀ぶりの万博、もうすぐやんなぁ~」漠然とそう思っていたら、裏の準備段階でエラい事になっていた! コロナ真っ最中に強行した東京五輪は無観客のたった2週間で、総費用1・7兆円と当初計画から倍以上の大番振る舞い。しかも五輪汚職発覚で運営ボロボロ。その点万博は会場建設費1850億円、運営費1300億円と五輪より断然安上がりで半年間、入場者予想2800万人と結構ずくめだったはず。いったい、何がどうなってるの?

交通不便、チケット高額、災害弱い… 真の目的はIR開業?

元ゴミ捨て場の会場

 万博は大阪・南港と北港の先にある人口島「夢洲」で2025年4月13~10月13日の半年間。国際万博としては、1970年大阪・千里での万博、2005年愛知万博に次いで日本では3回目開催。

 25年には戦後ベビーブーム団塊世代が全て75歳以上になることから、本格的な少子高齢化時代を踏まえテーマを「いのち輝く未来社会のデザイン」とし、健康やバイオ、ロボット分身リモートワークなどを紹介。近未来を意識し、会場内はオール電化で全面キャッシュレス化、目玉は大阪主要ターミナルから会場へひとっ飛びの「空飛ぶクルマ」だ。

大阪湾を飛行する「空飛ぶ車」のイメージ(大阪府提供)
大阪湾を飛行する「空飛ぶ車」のイメージ(大阪府提供)

 問題は交通アクセスと軟弱地盤。JRでUSJに行く際に利用する桜島線を終点・桜島駅から、大阪メトロが南港の中央線終点・コスモスクエア駅からそれぞれ延伸するがそれだけでは到底輸送力が足りない。バスやマイカーのために道路橋と地下道路が拡充整備されるが、いずれも来年末ギリギリ完成予定で会場建設中には間に合わない。

 夢洲は元々関西一円の廃棄物処理場、つまりゴミ捨て場として埋め立てられたから地盤軟弱。森友学園不正で問題になった「地中のゴミ」どころの騒ぎではない。護岸も低いから直下型地震、津波などの自然災害に弱い。

 交通アスセスも不十分で、津波などの風水害時は、横へ逃げる水平移動による島外脱出がすぐには困難。それなら上へ逃げる垂直移動場所がぜひ必要だが、この地盤では建築物は3階以下に限られるから逃げ場が無い。

資材高騰、建設ピンチ

 千里での70年大阪万博を知る者に最大の思い出は、奇抜な「太陽の塔」とユニークな各国、各企業のパビリオンの姿。「月の石」や「人間洗濯機」に近未来を感じ、普段見たことのない外国人に驚いたりした。

 25年万博の公費による建設費上限は1850億円。あの東京・国立競技場だけの建設費と大差ないから随分安上がりだ。6月にはシンボルの木造建設物「大屋根リング」(1周2㌔)が着工。民間パビリオン起工式もボツボツと始まっている。

 ただし資材や建設職人がコロナとウクライナ侵攻で確保が難しくなり建築費は、コロナ前に比べ4割程度急上昇。建設工事競争入札は軒並み不調続きで、さらに〝24年問題〟と呼ばれる建設業界の時間外労働規制強化も重なり、ゼネコン側は五輪では突貫工事で大もうけしたが、今回は「いくら金をもらっても、出来ない物は出来ない」と諦め気味。

 外国パビリオンはこの影響を受け、まだ1件も着工していない。協会側は「今年末までに着工すれば間に合う」というがリミットは刻々と迫る。現在、参加国の約3分の1の50カ国が「自国でデザインした独自パビリオンを作る」と表明しているが、時間的制約もあり今後は協会が建物を代理で建設して引き渡すケースも増えそうで、そうなると費用的にも奇抜なデザインは陰を潜め、当たり障りのない既成建物が並ぶ可能性も増す。

 今春にはパビリオン敷地引き渡しが始まっているから、当初予定では来夏には建設工事自体は完了。内装が25年1月には終わり、3月末までに展示品搬入終了という青写真を協会側はあくまで崩していない。

 建設工事が始まると、通常なら協会側は前景気をあおるためにもメディアや出展の国や企業対象に見学会を行うものだが「場内が混乱する」との理由で外部に現場公開していない。現状では工事用搬入路が1本しかなく12㌧大型トラックが頻繁に出入りしたいのに、はかどっていない現状も理由とみられる。

エンタメは「吉本」が自信

 当初運営費は809億円。この8割以上を入場料収入で賄う計画。基本入場料は予定価格を上回る7500円。TDLやUSJとほぼ同価格で、半年使える通期パス3万円。会場は阪神甲子園球場40個分の広さとは言え、ホントに1日平均15万人もの入場者があるのだろうか? 交通アクセスがぜい弱だけに「行き帰りだけでグッタリ」になりかねない。関西の企業には、大量に入場券の割り当てが回されそうで今から恨み節が聞こえてくる。

 〝負の材料〟山積みの中で、唯一綿密な計画で、万博のエンタテインメント部門をリードするのが〝笑いの総合商社〟吉本興業だ。大阪生まれの企業としていち早く独自パビリオン出展を発表。「WaraiMirai」と題したプレ・イベントを3年前から繰り返してシミュレーション。NONSTYLE石田さんがプロデュースした「大阪楽市楽座」での〝大阪夢祭〟でも芝居小屋や大道芸パフォーマンスを磨いている。吉本興業の前代表取締役会長の大﨑洋さん(70)は6月で同社役員を退任し、万博シニア・アドバイザーに加え催事検討会議の共同座長職に専念。会場での催し物全てを指揮するから、こちらの方は成功間違いなさそうだ。

 吉本が担うのはイベント指揮だけで無く、五輪汚職で身動きの取れない催事イベンター複合企業「電通」に代わっての万博全体の運営。既に関西の有力企業が集まって万博支援へ結成された一般社団法人「チーム関西」のリーダー役も同社が務め、万博協会やチーム関西にも社員派遣している。

これで盤石「大阪維新」

 万博は延期も含め多少ゴタゴタしても、チケットがある程度売れた時点で〝成功〟の評価を受けられる。無観客で強行し大赤字を出した東京五輪の二の舞はまず起こらないからだ。

 大阪維新の会は、府政・大阪市政・堺市政だけでなく、府内の行政・立法機関の大半を抑える政治集団。自民党から派生した同会の真の目的は「新たな利権」作り。二世、三世議員の多い大阪の自民党地方議員集団に代わって、橋下・松井時代に蜜月だった安倍・菅政権と交渉し「万博とIR(統合型リゾート、つまりカジノ)」を一体で、新たな利権として入手することに成功した。

 コロナ禍で多少の計画変更はあったが、全国各地で「誘致反対」の声が相次いだIR。それが大阪では大した反対の声も出なかったのは〝露払い役〟の大阪・関西万博の存在感が大きい。かくて大阪維新は、万博後に大阪での盤石がさらにIRに向け続くことになる。