寝屋川市は14日、市役所で記者会見を開き、11月から自治体として日本で最初となるAI電話サービスの実証実験を始めることを発表した。学研グループのGakken LX(東京都品川区)と共同開発したもので、福祉相談と高齢者の話し相手の二つの分野で、AIが24時間365日応対する。従来の人が行う電話対応も継続し、AI電話の利用番号は市のホームページで公開する。

福祉相談の対話型AI電話「キキマド」は、障害福祉課で実証実験を始める。市は将来、全庁でAI電話を導入することを見据え、制度が複雑で対応に高度なスキルが求められる障害福祉課を、最初の実証の場に選んだ。相談者の中には、何を相談すればよいか分からない人も少なくない。AIは相談者に質問を重ねながら悩みを具体化し、担当する課や申請に必要な書類、準備するものを案内する。AI電話で相談した人が窓口を訪れた際は、職員がAIとの相談記録を確認し、手続きを進める。
高齢者向けには、AI職員だけで構成する市役所の仮想組織「聞きましょ課」を設け、日常の話し相手になる。同課には、あかりさん(20代、明るく元気な性格)、みやびさん(40代、はっきりとした性格)、なごみさん(60代、落ち着いた性格)の3人が所属しており、利用者は好みに合わせて話し相手を選び、健康や趣味、日々の出来事などを自由に話せる。

どのAI電話も、通話時間に制限はない。会話の内容は電話番号と紐づけてデータとして記録されるため、福祉相談では別の課への相談であっても一から説明する必要がなく、いわゆる「たらい回し」を防ぐ狙いもある。聞きましょ課への問い合わせの場合、前回の続きから話せる。AI電話は、市が福祉の個人情報を管理するシステムとは接続しておらず、セキュリティー面にも配慮している。
今回の取り組みの背景には、公務員の人手不足と市役所の電話対応の業務量の多さがある。市はAIに電話対応を任せることで、限られた人材を対面での支援に振り向ける考えだ。
広瀬慶輔寝屋川市長は「福祉は最も難しい分野だからこそ、AIで検証する価値がある」と話した。聞きましょ課をスマートフォンのアプリではなく、電話にした理由について「技術的に可能なものを、あえてアナログ化する」と説明し、高齢者がAIに触れる入り口にしたいとの考えを示した。Gakken LX代表取締役社長の中村基孝さんは「寝屋川市の実証実験をもとに、全国の自治体にも広めていきたい」と語った。
市はこのほか、市役所を民間企業のAI技術の実験場として開放する「AI実験ラボ」を開設し、事業規模を問わず共同開発のパートナーを募集する。今回のGakken LXとの取り組みが第1弾となる。
福祉相談のデモでは、高齢の母親が検査入院の間、障害のある息子を預ける先に困っていると相談する想定で、AIはショートステイの利用方法を案内し、氏名などを聞き取り、後日担当職員から折り返す旨を伝えた。聞きましょ課のデモでは、相談者が夕飯の献立を質問し、AIがお勧めの料理や調理のコツを紹介した。
広瀬市長は今後について、AIの進化の速さを踏まえ「1年以内に庁内全体に広げられれば」と見通しを語った。(上田智也)
