「化粧」から口の健康を 資生堂が提案する〝口腔外ケア〟

 超高齢社会を迎えた現代、介護を必要とせず、できるだけ長く自分らしく暮らす「健康寿命」が重要視されている。その鍵の一つが、毎日の食事や会話を支える「口」の健康だ。

 資生堂ジャパン(大阪市中央区)は、15年以上にわたり研究してきた「化粧療法」を生かし、顔のスキンケアや身だしなみを整える動作から口の健康を支える「口腔外ケア」を提案している。「高齢者セミナー 口腔ケアコース」と題する体験会を全国8都市で定期的に開催。先日の大阪会場では、約20名(定員)の男女が参加し、日常に取り入れやすいケアを実際に体験した。(西村由起子)

 年齢を重ねると、食べ物をかみにくい、むせる、食べこぼす、滑舌が低下するなど、口の機能が徐々に衰えることがある。こうした「オーラルフレイル」は、食事だけでなく会話や外出など日常生活にも関わる。健康寿命を延ばすには、病気の治療だけでなく、こうした〝小さな衰え〟を日常の中でどう防ぐかが課題となる。

 そこで資生堂が着目したのが「化粧」だ。化粧療法とは、スキンケアやメイクアップなどの化粧行為を通じて、心身機能や生活の質の維持・向上を目指す取り組み。同社では2010年から研究を重ね、その知見を口の健康にも生かそうとしている。

 9月15日に資生堂大阪ビルで開かれた同セミナーでは、資生堂みらい開発研究所の主任研究員・池山和幸さんが「健康長寿の秘訣は、整容で栄養」と題して講演。「化粧しなくても生命にはかかわりませんが、食べないと生命にかかわります」と、〝粧う(よそおう)〟ことと〝食べる〟ことをつなぐ「口腔外ケア」の考え方を紹介した。

 講演後には、参加者が鏡を見ながら、顔をやさしく刺激するフェイスエクササイズやスキンケア、唾液腺へのアプローチなどを実践。普段から行っているスキンケアに、表情筋や舌を動かすトレーニングなどを組み合わせ、口腔機能を意識する方法を学んだ。

 「唾液腺を初めて知った。唾液がたくさん出て効果を感じたので、今日から早速試したい」。参加者からは、実際に体験したからこその声が聞かれた。「オールインワンのスキンケアでも、こんなに気持ちいいなんて驚いた」と、無理なく続けられる手入れに新鮮さを感じた人もいた。

 また、以前に地域でセミナーに参加し、さらに知りたいと妻を連れて来た人や、「初めて資生堂のビルに入り、専門家から詳しく聞いて体験できて楽しかったし参考になった」という人も。「外出する機会になって良かった。また何か参加したい」との声もあり、ケアを学ぶ場が外出や交流のきっかけにもなっていた。

 食べる、話す、笑う――。口は、単に栄養を取り込むためだけの器官ではない。人と会話し、笑顔をつくり、社会とつながるためにも欠かせない。だからこそ、特別な訓練としてではなく、日々のスキンケアという身近な習慣から口の健康を考える「口腔外ケア」には、健康寿命を支える新たな可能性がある。

 美容から始まった「化粧」の研究を、年齢を重ねても自分らしく暮らすための習慣へ――。資生堂が15年にわたり積み重ねてきた化粧療法の研究は、超高齢社会における健康づくりを考える上でも、一つの新しい視点を示している。

タイトルとURLをコピーしました