【地域密着の法律相談】遺言の有無で明暗
地域に根差した法律相談を手がける司法書士法人「オフィス・ナカイ」には、相続をめぐる複雑な相談が持ち込まれる。中でも印象に残るのが、家族の〝長期失踪〟が絡むレアなケースだ。
今回寄せられたのは、20年前に夫が失踪し、その後一切連絡が取れないまま、妻(90代)が亡くなったという事例。遺された2人の子どもは、母の遺産を兄弟で分けたいと考えた。
しかし、法律上は事情が異なる。戸籍上、夫が生存している扱いであれば、相続は配偶者が2分の1、子ども2人がそれぞれ4分の1ずつとなる。たとえ長年音信不通であっても、死亡が確認されない限り、権利は消えない。
こうした場合に検討されるのが「失踪宣告」の申し立てだ。一定期間行方不明が続いた人を、法律上死亡したものとみなす制度で、一般には失踪から7年が経過していることが要件となる。
今回のケースでは、過去に警察へ失踪届は提出されていたものの、その受理証明書が見当たらなかった。証明書は手続きの重要な資料となるが、個人が紛失している例も少なくない。一方で、警察側での再発行や確認が難航することもあり、手続きが滞る一因となる。
別の方法として、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる手段もある。これは行方不明者の財産を代わりに管理する人を選ぶ制度で、この場合、子どもは法定相続分として2分の1を受け取り、残る配偶者分は管理人を通じて保全される。さらに、選任から財産処理までに時間を要することもあり、費用負担も発生する。
実務上は、こうした手続きの煩雑さから、対応に時間と労力がかかるのが実情だ。今回の相談でも、子どもたちは〝長年音信不通の父ではなく、自分たちで分けたい〟と希望していた。亡くなった母親も子どもに財産を残す意思を示していたという。
こうした事態を円滑に解決する手段として有効なのが「遺言書」である。相続は家族関係や状況によって思わぬ複雑さを伴う。同法人は「将来のトラブルを避けるためにも、遺言書の作成を含めた早めの準備が重要だ」と指摘している。
同事務所は、大阪市北区の北区民センターで無料法律相談会を開く。実施日は、5月7日と6月23日の2回。各日午後1時半から4時半まで。5月7日は同センターの1階第3会議室、6月23日は2階第6会議室を使用する。相談は予約制。
■司法書士法人 オフィス・ナカイ/大阪市北区天満4丁目5番3号 日本プロパティビル1階/電話06(6358)4533
https://legal-help.jp/
