
なにわのみやコンサルティング増田昌代
1972年生まれ。立命館大学大学院経営管理研究科修了(MBA取得)、中小企業診断士。大手IT企業の経営企画室での経験を基盤に、複数業界でのキャリアを構築。東証上場企業の広報IR責任者を経て2024年に独立。データ分析に基づくWEBマーケティング戦略立案と各種補助金活用支援を得意とし、中小企業の持続的成長をサポート。
トラック運送業界は、私たちの生活を支える重要な社会インフラでありながら、その現場では深刻な人手不足と長時間労働が常態化していました。昨今、特に中小の運送事業者にとっては、燃料費の高騰や運賃への価格転嫁の難しさが経営を圧迫しています。
こうした厳しい経営環境を打開するため、国土交通省と全日本トラック協会は「中小物流事業者の労働生産性向上事業」を公表しています。この補助制度の目的は、荷役作業の効率化(荷役時間の短縮・荷役負担の軽減)等に資する機器の導入により、労働生産性の向上と多様な人材の確保を図り、働き方改革を推進することです。
まず、大きな柱となるのが、荷役作業を効率化する「車両の効率化設備の導入等事業」です。例えば、テールゲートリフターは、重い荷物の積み降ろしを機械の力でサポートし、ドライバーの身体的負担を劇的に軽減します。これにより、高齢のドライバーでも活躍しやすくなり、荷役時間の短縮によって運行全体の効率化も期待できます。補助率は導入費(機器購入価格)の1/6となっており、補助上限額は車両の種類によって異なります。
次に、業務のデジタル化(DX)を促す「業務効率化事業」です。こちらは、配車計画システムや予約受付システム、受注情報事前確認システムなどの導入費用に対し、補助率が1/2となります。多くの現場では、紙の伝票や電話・ファクスといったアナログな受注業務が残っています。これらをデータ化することは、業務効率化の第一歩となります。
さらに、「経営力強化事業」や「人材確保・育成事業」においても、持続的な経営の確保を図るための支援が用意されています。物流の「2024年問題」は、残業時間の規制という単純な話ではありません。長年先送りにしてきた重要な課題に対し、中小トラック運送事業者のみならず、サプライチェーン全体でどのように向き合うかが問われています。

