増える日本語学校 背景に中国の受験競争も

浪速区に来春開校予定「智見未来学院」福徳さんに聞く


▲留学生が授業を受ける教室を案内する福徳校長

 外国人が日本の大学や専門学校に進学するために、日本語を勉強する日本語学校というものがある。10年ほど前は国内に400校程度だったが、現在は800校近くまで倍増。急増する日本語学校に果たして需要はあるのだろうか。大阪市浪速区大国3で来春の開校に向けて準備を進める智見未来学院を訪ねた。

 来年4月に1期生を迎える予定の智見未来学院。定員は80人だが、「すでに中国人やネパール人ら60人以上の入学希望者が集まっています。順次応募があり、オンラインで面接を進めている状況です」。こう話すのは、同学院の開設後に校長に就任する福徳安早子さん。過去に3校で専任教師や教務主任などを務めてきた日本語講師歴約20年のベテランだ。

 日本語学校は法務省の基準で、留学で来日する場合日本語能力試験のN5レベルが必要となる。このレベルは、日本語の勉強に150時間程度取り組み、ひらがなやカタカナ、簡単な会話ができる状態だ。日本の大学や専門学校の授業について行くには、N1またはN2程度にまで向上させる必要があり、「日本語学校で学び、およそ2年で習得させる流れ」(福徳さん)という。加えて、ゴミの出し方や交通ルールなど留学生たちへの生活指導を行うのも日本語学校の役割だ。

 同校はアジア圏、特に中国人を対象にしているそうだが、日本語学校の開校ラッシュが続く中、需要はあるのだろうか。

 この疑問に福徳さんは「中国では今、就職難から過度な受験競争が起きていて、その受け皿として日本留学が注目されている」と答える。

 中国の受験競争の背景にあるのが、都市と農村で厳格に分けられる戸籍制度だ。つまり、家や出身地によって教育機会や社会保障、不動産取得などでさまざまな格差が生まれてしまう。

 その社会環境の中で戸籍に恵まれなかった人が、自らの人生を変えられる平等なシステムが「高考」だ。日本で例えるなら大学入学共通テストにあたり、受験競争に打ち勝つことで、一流大学へ進学し、良い会社に就職して安定した人生を送ることができる。

 福徳さんは「中国ではすでに大学進学は当たり前になってしまい、現在は上位校に行かないと就職にありつけない状況に発展している。受験に失敗して一度ルートから外れてしまうと二度と復活できないから、新たなルートとして日本留学が注目されている」と説明する。

 つまり、中国国内にいては就職難のままだが、日本へ留学すれば留学生という箔がつき、日系企業にも就職しやすいなどのメリットが得られるということだろう。

 同校の設立者でビトウコーポ レーションの代表、耿亮(こう・りょう)さんも中国人留学生として訪れ、日本でそのまま事業を興して成功した一人。中国に日用品を製造する工場を建て、コロナ禍のマスク需要でさらに業績を伸ばした。「自分と同じような道を歩もうとする留学生を応援したい」のが設立目的という。

 来春の開校に向け「風通しの良い、みんなが前向きに挑戦していける学校にしていきたい」と意気込む福徳さん。地域に対しても「住民の方からは未知の人たちに見えると思うので、ボランティアに参加したり、地域活動に参加したりして、共に地域で生活する一員としてコミュニケーションをとっていきたいと話している。