少子化の時代にもかかわらず、2025年度における大阪府下の私立中学への入学者数は増加傾向が続いている。25年度の入学者数は過去最高の7715人で、前年より300人以上増加した。特に今まで私立を検討していなかった層が新たに参入している傾向も見られる。成学社入試情報室で上席専門研究員を務める藤山正彦さんは「入学者数増加には、今年度から適用される『私立高校の授業料無償化制度』が大いに関連している」と話している。

「私立志向」増の背景
~教育費負担軽減と進学のメリット
手に届きやすくなった「中学受験」
同制度の恩恵を最も受けているのは中間層以上のゆとりある世帯だ。高校進学の教育負担が減る分、教育費に余裕が出た結果、私立中進学を検討する家庭が増えた。
私立中学志望の増加は、入塾データからも見て取れる。成学社が運営する個別指導塾「フリーステップ」の、2025年4月時点での入塾者数を17年同月と比較すると、「練成コース」は約1・6倍、「中学受験コース」は約2倍に増加している。「練成コースに通っている生徒の中には、中学受験も少し意識している『潜在的な受験生』も多い」と藤山さんは話す。
年々受験者数が増加している背景には、受験・入学ハードルの低下も関与している。入試科目数を1~2教科に絞ったり、英検などの外部試験を利用する学校が増え、受験がしやすくなっている。「一昔前だと、中学受験をするなら4年生から塾に通い詰めて…というイメージだったが、現在だと6年生の夏からでも受験を目指せる状況だ。『小6の夏休みにふとオープンスクールへ足を運んでみたら気に入ったので受験を決めた』という家庭も少なくない」と藤山さん。
また、奨学金制度なども年々拡充しており、金銭的負担が軽減されていることも影響している。

「立命館人気」躍進
各校の入学者数を見ても、多くが入学者数を伸ばしている。その中でも注目すべきは利晶学園大阪立命館(旧名:初芝立命館)と浪速だ。
大阪立命館は、5年ほど前までは1学年100人規模の学校だったが、2025年度の入学者数は260人に。理由の一つとして「立命館大の人気上昇」がある。「15年にキャンパスが茨木市に新設されたことで、、大阪府内から進学しやすくなり人気が上がっていると推測できる」と藤山さんは分析。
浪速については「中学校専用の新校舎を設立し、定員を拡大したのが大きいだろう」(藤山さん)。結果として昨年より20人以上入学者が多かった。

「私立志向」の背景
高校受験の場合、公立の上位校が高倍率の場合、あえて次点ランクの公立を受けるよりも私立を選ぶという傾向も。私立専願で受験する子どもの数も増加している。
そもそも中学・高校いずれも「私立に行かせたい」というニーズが増えているのはどういった背景か。先述のとおり、受験ハードルが下がることで選択しやすくなったことが前提にあるが、「さらにメリットのひとつとして挙げられるのが〝提携校の多さ〟だ」と藤山さんは指摘する。私立高校は大学進学先への指定校枠が多く、それを見越して「私立の中高一貫校へ」と考える保護者が増えている。コロナ禍を経て、私立校の教育の手厚さも引き続き評価されている。今後もしばらく「私立志向」傾向は続くだろう。

取材協力:成学社