【万博コラム】アニメで描く未来、日本の〝らしさ〟問うジャパンデー

 7月3日に開催された日本のナショナルデー、ジャパンデーは、秋篠宮ご夫妻や石破総理出席のもと、厳かに、そしてエネルギッシュに執り行われた。

 これまで何カ国ものナショナルデーの式典をみてきているが、日本は一味違った雰囲気を纏(まと)っていた。

 会場にはみゃくみゃくやキティちゃん、歌手のMISIAなども登場し、華やかな場面もあったが、日本を代表して紹介されていたのは浮世絵などと並んでアニメだった。

 日本文化の象徴、クールジャパンの代名詞ともいえるアニメをここに持ってきたところに、日本らしさが感じられた。

 AIでも、量子コンピューティングでも、宇宙産業でも、医療やヘルスケアテクノロジーでも、リニアモーターカーでも、空飛ぶ車でもない、アニメ。そこに日本の未来をみているのだろうか?

 他国の式典では、その国が見ている未来、この国がどこに向かっていこうとしているのか、を伝える映像が多用されていたが、日本はそれがアニメだった。確かに最新技術を使っての演出はされていたが、アニメを推すなら、まず足元のアニメ業界の体質改善から始めてほしい。東京で「オールジャパン」と呼ばれる一部の利権を持った人たちだけが儲かって、現場のクリエーターたちが疲弊している産業構造はそのままに、今後AIによって職を失う人たちがたくさん出てくるであろう業界を、日本の未来の向かう先としたのか、と思うと複雑な心境になる。

 アニメ推し、それ自体は否定しないのだが・・・。

 ほとんど前を向くことなく、官僚が用意した文章を読み続けた石破首相に「それでいいのか?」と問うてみたい。

 心に染み入る君が代の独唱、日本文化と歴史を感じる雅楽の演奏など日本ならではの演出もあり、全体としては日本らしい素晴らしい式典であったことは間違いない。

 万博の取材を続けていて感じることは日本文化の豊かさ、奥深さと、裾野の広さ。柔軟で、斬新。日本人の生活や思考の底辺に敷き詰められたものがあるからこその豊かさ。そういうものを痛切に感じているだけに、今回のセレモニーでそれらが伝わったのか気になる。