砂漠の暮らしから星の願いまで 五感で巡るクウェート館

 いつも長蛇の列ができているクウェートパビリオンだが、中に入るとかなり空間がしっかりとってあり、あまり混んでいる感じがなく、比較的ゆったりと巡れる館内だった。

 中に入ると、まず最初に球体をスクリーンにして投影される映像で同国について簡単な説明を受ける。

クウェート、万博
クウェート、万博

 その映像の中には3人のキャラクターが登場する。クウェート人の父と日本人の母を持つダナという女の子、日本のロボットであるヒヤエ、そして世界中を飛び回ってクウェートで平和を見つけた渡り鳥のサラムだ。サラムとはアラビア語で「平和」を意味する。

クウェート、万博

 映像が終わって次へ移動していくとクウェートの砂漠地帯や自然、生物、その地域で生活していた人々のいにしえの生活などを紹介する展示が並んでいる。
 野生生物や人々が過ごした砂漠での生活、遠い過去に先人がクウェートでどのように暮らしていたのか、そこに住む生き物、発見された工芸品、そしてクウェートから世界中の国々へ、またその逆のルートをたどる交易路などについて複数のセクションに別れて説明されている。

クウェート、万博

 入って右手にあるセクションでは、クウェートの人々がどのように暮らしていたかを説明している様々なテーマが並んでいる。そこから気になるテーマを選ぶと、先人がテントでどのように暮らしていたか、どうやってある地点から別の地点へ移動し、砂漠や荒野で迷わずに場所を変えていたかを知ることができる。
 また夜の砂漠で、人々がどのように場所を伝え、どのように水を見つけ、家族や親族、自分たちがどこにいるかを見極めていたかについて学こともできるようになっている。

クウェート、万博
クウェート、万博

 真ん中に置かれたテーブルにはクウェートの砂が入れられていて、ヘビやサソリ、その他の生き物や植物など、クウェートに生息する野生生物がデジタルで表示される。また、その砂の中を掘り進めると、大昔にクウェートで発見されたアンティーク工芸品を見つけることができる。

クウェート、万博

 左側に移動すると、クウェートに今も生息している一部の生き物を見つけることができるセクションがある。小さな生き物が、海、湿地、農地、砂漠などのどこに住んでいるのかを当てて楽しむようになっている。

クウェート、万博
クウェート、万博

 インタラクティブになっていて、生物の生態を学びながら、その生物がどの環境に生息しているかを探し当てるというエンタメ要素の入った構成になっているのだ。

 奥にはクウェートと世界の国々とのつながりを現した地図が壁にかけられているが、その地図ではクウェートがこれまでに築いてきた海外との交易路を表示していて、遠い昔にはこの経路で物資のやり取りがされていた。

クウェート、万博

 例えば、以下のことが一目でわかるようになっている。
 クウェートがタンザニアから船で輸入していたアジェンダウッドのサンプルが、目の前に置いてあり、サンプルが入ったバスケットを開けると正しい航路が光る。コーヒーはイエメンから、黄色の線に沿ってラクダで運ばれてきていたし、オマーンからの乳香は緑色の航路に沿って船でクウェートまで来ていた。デーツは逆にクウェートからイランへラクダで運ばれていった。真珠はクウェートから船で青い航路に沿ってインドへ運ばれて、売られていた。絹は中国と日本から輸入していた。それぞれにサンプルが置かれているので、サンプルを触りながら各航路を確認できる。

 次にあるのは石油採掘セクション。1900年代から2025年までの125年の期間を複数のセクションに分けて、紹介している。各セクションごとに、今のクウェートを形作るのに関係した出来事を説明している。

クウェート、万博

 最初の油井が発見されたことから、クウェートで最初の石油会社が設立されたことなど様々な出来事を経て、今日のクウェートになるまでを学べる。これらの出来事が今日のクウェートを形作っているのだ。

 奥にいくとクウェートの伝統的な踊りが楽しめるスペースがある。

クウェート、万博
クウェート、万博

 他には環境保護をテーマにした遊びも。ポンプを押して画面に出てくるデジタルの水で大きな石を持ち上げる遊びだ。

クウェート、万博

 大人でもかなり真剣にプレーしていた。数メートルだけ滑れる滑り台もかなり人気だった。

 これまで移動してきた広い空間から一歩踏み込んで入った部屋は「オアシス」と呼ばれる空間で、アラビア語では「アル・ワハ」と呼ばれている。

クウェート、万博
クウェート、万博

 会場内を歩き回ったり、館内に入るために長蛇の列に並んだりして疲れているかもしれないので、ここでゆっくりくつろいで休憩してもらうためのスペースになっている。天井には天窓があり、自然光が差し込んで、人々をリラックスさせてくれる。
 オアシスの中の上方にあるデザインは、クウェートの雲のようなものを現している。またクウェートの砂に似たような雰囲気も感じられる。

 次の空間へ移動すると、そこには光っている球体が縦に並んで立てられていて、それぞれの中には写真と説明が入っている。それらは、クウェートと日本の関係がどのように始まったか、そして両国の関係をより強くした印象的ないくつかの出来事などについて説明している。

クウェート、万博

 例えば、クウェートが最初に参加した万博が1970年の大阪万博だったので、その55年前の大阪でのクウェート館の写真を見ることができる。

クウェート、万博

 他にも2011年の東北大地震の際、クウェートは500万バレルの石油を寄付した。金額にして400億円に相当するが、そのことを説明する写真もあった。

クウェート、万博

 全ての説明はアラビア語、英語、そして日本語で書かれている。

 最後の部屋は、「願いの部屋」と呼ばれていて、プラネタリウムのような作りになっている。ここで願い事をすると、星が上に上がっていく。壁際に座る場所があるので、そこに座って天井に映し出される星の世界を見つめていると、どこか別世界へ行ったような気分になった。

クウェート、万博
クウェート、万博
クウェート、万博

 中東というと日本人にはあまり馴染みがない地域で、「どんな国なのか?」と思ってパビリオンを訪れていると、かなり勉強になる内容だった。情報は過去から現代へ向けて整理されていたし、当時の先人が暮らしていた環境や自然との関わりなど興味を持って学べる構成になっていた。後半は身体を使って踊ったり、遊んだりして盛り上がったかと思うと、オアシスで休息をとってから星の世界へ移動するという、濃い内容だった。

 パビリオンの前にあるステージでは時折、民族ダンスのパフォーマンスも行われているし、併設されているレストランも常に混んでいて人気そうだ。

クウェート、万博

 レストランの手前にあるカフェのアイスは最高においしかったということを最後に付け加えておく。