英国パビリオンは、「拍手の後の静寂」という写真展を6月27日から7月2日まで開催している。
この写真展は、英国に本拠地を置く「バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(通称・BRB)」のダンサーの一瞬を捉えた写真展示で、アート性の高い写真が揃っている。
しかし、写真に写っているのは舞台でダンスをしているシーンではなく、舞台から降りた際の一瞬や練習の後の疲れ切った瞬間の表情などを含めたパフォーマンス前後の観客の目に触れることが少なく、共有されることがほとんどない貴重な瞬間が収められているのだ。
舞台上での華麗な動きや表現の裏では、ダンサーたちは肉体的にも精神的にも多大な犠牲を払っている。舞台上でのスリル感が精神や肉体的な犠牲に勝り限界以上に力を発揮することがある、しかし、拍手喝采のステージを降りた後はどうなるのか? そこに焦点を当てたのがこの「拍手の後の静寂」だ。
また、撮影と同時進行でダンサーたちの健康に関する課題を解決するための実証実験が行われていた。
BRBとCanon、写真家のクライブ・ブース氏が協力し、ダンスにおける「相対的エネルギー不足(RED-D)」を調査することで、消費されるエネルギー量と比較してエネルギー摂取量がパフォーマンスの要求に追いついていないときの身体と精神に及ぼす影響を解析しようとしたのだ。
「相対的エネルギー不足」研究の一環として、BRBは各ダンサーに「生物学的健康パスポート」を導入。ダンサー各自の健康プロファイルを通して、身体の変化を追跡し、長期的な健康とパフォーマンスの安全性を守る革新的な取り組みだ。
例えば、ダンサーは本番のショーを終えるとオフタイムが午後10時半となり、そこから体力を回復させるため、エネルギーを補給したりすると睡眠を取る時間帯が自然な概日(がいじつ)リズムと合わずに〝社会的時差ぼけ〟になり体調管理が難しくなる。加えて、厳しい練習や舞台をこなすために、自身を追い込むことを繰り返していくと、将来的に老年期におこる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などのダメージを与えてしまうことも。こういった課題に対して継続的にデータを取って医療面からのサポートを提供していくことで問題を解決しようとしたのだ。
「生物学的健康パスポート」で、安静時のエネルギー消費量や骨密度、血液検査などの結果を調べてダンスの代謝及び生理学への影響を理解するプロファイリングを行った結果、生理不順が改善されたり、骨密度が健康レベル以上に回復したり、と目覚ましい効果を達成しているという。
少し難しい話になってしまったが、ダンサーやアスリートの健康を維持するための取り組みを、ユニークな角度から光を当てて写真として展示している。
また、25日には展示に登場したBRBのダンサーたちによるライブパフォーマンスが行われ、多くの人が鑑賞した。
BRBは、今回の来日に際し、万博会場での特別パフォーマンスのほか、東京や大阪でのパフォーマンスを行っており、大阪は7月2日にフェニーチェ堺大ホール(堺市堺区)で公演が行われる。