
ハンガリーパビリオンは没入型体験と民族音楽がテーマ。デジタル系の展示が多い中、独自の世界観を表現している。
ハンガリーの森や自然を想起させるようなデザインの外観から目を惹く存在。館内に入ると、少し照明を落とした空間に切り絵のようなものがガラスケースの中に展示されている。しかし、この作品、横から見るとその仕掛けがよくわかる。実はガラスを何枚も重ねていて、その1枚1枚に切り絵のようなデザインが固定されているのだ。1枚1枚を合わせて前方から見ると見事な作品になっている。


次に円形のシアタースペースへ移動。そこには丸く円を描くようにイスが置かれていて、その真ん中に白い衣装を纏った女性が微動だにせず立っている。

プラネタリウムのように半円形のドーム型の天井に星が散りばめられている暗闇の中で座って待っていると音楽が始まり、女性が歌い始める。歌は、ハンガリーの民謡で「avaszi szél vizet áraszt(春の風が水を氾濫させる)」。歌詞を繰り返しているように聞こえるが、なぜか聞き入ってしまう音楽だった。歌に合わせてパフォーマーの女性が動いたり、上からのサーチライトで照らし出されたりして音楽と調和し、自然と心に響く。


各国、色々な形で自国の文化や習慣、過去や目指すべき未来の姿を紹介しているが、ハンガリーパビリオンではこの歌が全てを現していると言える。特に説明もなく、とにかく黙って聴く。ただそれだけ。
シアターから出ると後はギフトショップと3階へ上がればレストランがあるのみ。イタリアパビリオンの本物のアート作品が注目を集めているが、ハンガリーパビリオンのこの歌唱パフォーマンスも本物としてもっと注目を浴びるべき内容で、2、3回と見に行く価値のあるパフォーマンスだった。