米国は高インフレを抑えるために政策金利の引き上げを行っている。一方、日本は金融緩和を続けているので、二国間の金融政策の違いが金利差を生み円安が進んでいる。現在は、米国の株価が下がり金利が上昇しているので、円安も進む。
原材料の高騰に加え、円の価値が下がり輸入コストの増えた企業にとってはダブルパンチ。止まらない円安で縮小していく日本経済を懸念する声もある。
ちなみに国際的な価格差を測るのに、マクドナルドの代表商品ビックマックの現地価格を比べる「ビックマック指数」というのがある。日本は約30年変わらない390円なのに対し、2000年と比べても米国315円→710円、英国422円→610円、韓国→381円→480円と、日本がいかに相対的に安くなってしまったかがわかる。
円安の原因となる金融緩和を続ける日本銀行に「固執しすぎではないか」というニュースを見た。しかし私見であるが、日本のインフレ率は世界の先進国と比べて低い(※)。金利引き締めを行っている海外を例に挙げてみよう。
英国は国債が急落し、一部の年金基金の運用が危うくなる事態を招いた。このため、イングランド銀行は国債の買い入れをせざるを得なくなった。これは金融引き締めの「ブレーキ」と緩和の「アクセル」を同時に踏むことで、市場は混乱している。フランスも金利引き締めに一部耐えられず「インフレ給付金」を拠出。このお金がさらなるインフレを招きかねないという声もある。
インフレを抑えるには金融引き締めは必要だが、同時に景気後退も招く。景気悪化で生活に困窮する国民に給付金をばらまくと、それは金融緩和の一種となる。
一方、先日私が参加した金融セミナーでは、円安を歓迎する話を聞いた。それは「日本に労働環境と投資が戻ってくる」というものだ。すでに円安や現地のコスト増などを理由に生産拠点を海外から国内に戻す動きもある。例えば、アパレルメーカーのワールドがそうだ。また、熊本県に建設予定の半導体世界最大手TSMC(台湾)のように海外のトップ企業が日本に工場を作るケースも期待されている。
投資はどうか。米国の代表株価指数のダウやS&P500は今月、年初来安値を更新したが、日本株は意外と底堅く、海外から再注目される可能性があるという。その理由の一つは金融緩和だ。良くも悪くも日銀が市場操作(イールドカーブ・コントロール)をしている恩恵だろう。もちろん、やめてしまった場合の危うさも共存するが。
このように、「円安を止めるために金融緩和をやめる」という判断はなかなか難しい。各国の矛盾を見るに、日銀の判断は妥当だと思う。