コミュニケーションライター/黄本恵子
夫婦間の問題で、相手の話に対し「きっとこういうことが言いたいんだろう」と決めつけて会話していませんか?これは、問題を解決から遠ざけるだけでなく、さらなる争いや不満を生む原因になります。
パートナーの話を理解するためには、『質問』が不可欠です。コミュニケーションのすれ違いのほとんどは、質問不足によるものです。
夫婦間のすれ違いを解消し、理解を深める質問術『メタモデル』についてお伝えします。
すれ違いの原因
人は、会話する際、自分が持っている情報をすべて正確に言葉にして伝えているわけではありません。無意識のうちに『省略』『歪曲』『一般化』しています。
- 『省略』…経験や情報の一部を省略・削除して伝えること【例】「もっと家族の時間を大切にしてよ」「家族の時間」というのは、どんな時間のことでしょうか? 家で一緒に過ごすことでしょうか、レジャーや旅行に行くことでしょうか。
- 『歪曲』…出来事や状況を自分の主観のみで捉え解釈して伝えること 【例】「あなたは私に対して冷たくなったわ」 「私に対して冷たくなった」という決めつけは、相手のどういう言動から来ているのでしょうか? スキンシップがないことでしょうか、プレゼントがないことでしょうか。
- 『一般化』…ごく一部の経験に対し「いつも」「みんな」などの広い結論を導き出して伝えること【例】「君はいつも僕のいうことを否定するよね」「いつも否定する」というのは、どの場面の、どんな時を指しているのでしょうか?賛成したことは一度もないのでしょうか。
これら『省略』『歪曲』『一般化』された話の内容を、「具体的には?」「どんな?」「どの?」「どういう?」「誰と比べて?」「いつ?」などの質問を使って具体的で正確な情報を引き出す心理テクニックが『メタモデル』です。
メタモデルの具体例
①『省略』に対するメタモデル
妻:「もっと家族の時間を大切にしてよ」
→ 「具体的には、どんな時間を一緒に過ごしたいと思っているの?」
「家族の時間って、どういう時間?」
②『歪曲』に対するメタモデル
妻:「あなたは私に対して冷たくなったわ」
→ 「僕のどんな行動がそう思わせたのかな?」
「いつ頃からそう感じたの?」
③『一般化』に対するメタモデル
夫:「君はいつも僕のいうことを否定するよね」
→ 「『いつも』って、どの時のことを言ってるの?」
「賛成したことって一度もなかった?」
質問に対する答えは一つより複数あったほうがより相手のことが理解できるので、「他には?」と別の例も聞くことがおすすめです。また、質問の際は、相手の言葉に対して興味・関心を示し、「もっと詳しく教えてほしい」と尋ねる姿勢が大切です。決して相手を責めるようなニュアンスで問いかけないようにしましょう。相手への共感を示しながら話を聞くことを心がけてください。
メタモデルは、夫婦間のすれ違いを解消するための『翻訳機』です。上手に使えば、相手の『本当に言いたかったこと』を導き出し、互いに理解を深め合うことができます。
黄本恵子(きもと けいこ)
大阪市出身。1980年生まれ。関西大学社会学部卒業。心理学について学びを深め、人間関係に悩む人々のカウンセリング業務に従事。その経験を活かし、家族間や男女間のコミュニケーションについての記事を大手WEBマガジンにて執筆。ビジネス書の編集・執筆協力にも多数携わる。米国NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー。
〈メディア出演〉ニュース番組『新・情報7daysニュースキャスター』に出演。「高齢者の親に免許返納を促す伝え方」についての記事が反響を呼び、取材を受ける。朝の情報番組『ビビット』に出演。「2歳児ができること」について紹介した記事が取り上げられる。