美の探究者 その感性と哲学(4) 一歩引いて自分を見つめ直す <久山奈津>

ル・キヤの久山奈津さん
久山奈津/まつげパーマが一般的でなかった1996年に創業。独自の「まつ毛カール」技術や「落ちないマスカラ」で一世を風び。まつ毛デザインと目元美容で、常に日本の先端を走り続ける。一流が集う東京と大阪・にサロンを構え、後進の指導にも力を入れている。

 読者のみなさんは自分を客観的に見ることはできていますか? 私は以前、自分を客観視することができていませんでした。
 そんな状況を変えるきっかけとなったのが、屋久島(鹿児島県)の大自然の中で農園を営む80代のおじいちゃんとの出会いです。
 ある日、彼が入院したと聞いたので、畑の手伝いを申し出たのです。そこは木や雑草が生い茂り、まるでジャングルのよう。日焼けしないように顔から首をタオルでぐるぐる巻きにし、蛾や今まで見たことのない虫が飛び交う中での作業です。虫嫌いの私にとっては本当に過酷で、カマキリの卵を発見した時には気を失いそうになりましたね。
 彼が退院してからも時々、畑を手伝うようになり、自然の中で生きるとはどういうことか、少しずつ理解できるようになりました。
 都会でバリバリ働いていても、いざ大自然の中に放り出されると、あまりにも自分が無力であるかを痛感します。いかに人間がちっぽけであるかを思い知らされるのです。
 ときに「都会で何不自由なく生活してきた人が、本当にここで生きていけるのか?」と言われ、ムッとすることもありましたが〝郷にいれば郷に従え〟と自分に言い聞かせてきました。
 しかし、この環境に馴染んでいくにつれ、都会で戦い続ける道しか知らなかった私は、全身にまとった鎧を脱ぎ捨てて生きていくという思いもよらない道があることを知ったのです。

 そこからは都会では常に戦闘モードだった自分を一歩引いて客観的に見つめられるようになり、心に余裕も出て来ました。あれだけ嫌いだった虫に対しても、生き物すべてにつながりや意味があると思えるようになり、自分目線ではなく、全体の中で自分はどうあるべきかの自然の摂理を意識するようになったのです。
 スタッフに対しても、彼女らを制限の中に閉じ込めず、個性を尊重することで、全体としてのサロンの個性が増幅すると思えるように考えが変わりました。
 屋久島での学びは私に客観的な視点を与え、広い視野で物事を捉えることの大切さを教えてくれました。彼との交流から得た学びは、今後の人生でも大切にしていきたいと思います。

(ル・キヤ代表 久山奈津)

ル・キヤ アイスペシャリテハービスENT店
大阪市北区梅田2ー2ー22 ハービスENT 6階 tel.06(6346)7644
まつ毛を傷めず育てながら、きれいに長持ちする“理想の上向きまつげ”を実現。