【新米投資家記者の勉強会】米国株なぜ下落? 最高値から一時 S&P500 マイナス18%

ついでに、厚切りジェイソンさんのツイ消し騒動も考える

 私なりに過去の株価暴落を調べてみて、主に3つの原因に注目した。①一大ブームがひとまず一段落した②オイルショックなど原油高による原材料の高騰、または高いインフレ率。③中央銀行による量的引き締め(利上げ)だ。

 過去の事象と同様のことが起きているのである。

①はコロナ禍の在宅ワークでDX化が加速し、大手企業のGAFAMをはじめ、新興IT企業が躍進。コロナ銘柄ともいわれ、ロックダウンや自粛を繰り返しながら以前の社会活動が戻りつつあり、ブームが一段落した状態に移っている。

②については本紙で何度も取り上げたが、コロナ禍でストップしていた流通が一気に再開し、供給が追い付かない状態になった。特に原油などのエネルギー関連だ。加えて原油や天然ガスのトップシェアを誇るロシアとウクライナの紛争が問題を悪化させている。そして、原油高でさまざまなモノの価格が上昇。世界で2%のインフレ率が適正といわれる中、米国は8・3%(5月11日現在)と、40年ぶりの高水準だ。

③はインフレ抑制のため、米中央銀行(FRB)はお金の価値を上げてモノの価値を下げようと、政策金利を上げている(量的引き締め)。ただ、利上げで成長企業などは資金調達が難しくなるので、成長が減速する。また、利上げは債券価額の下落につながり、市場の長期金利が上昇、株価の下落傾向も強まる(ざっくり説明すると、国の政策金利は短期金利、これに市場の需給が加わるのが長期金利)。

 今後の米国株について、株式市場全体(マクロ経済)の見通しは悪い。FRBの利上げは、インフレ減退のめどが立つまで行われるからだ。現在、米国の政策金利は1%で、年末には3%まで引き上げることが確実視されている=下表。

 ちなみに、景気減速リスクがある金利は2・4%(中立金利)といわれるので景気動向も注目したい。この間にインフレ率が現在の8・3%から年末に4・3%と、FRBの予想通りなら、見通しは明るくなる。

 今後の株価のゆくえは、高インフレとの戦いなのである。

 ところで、米国株投資を薦めるお笑いタレントの厚切りジェイソンさんのツイート全消去が話題になったとき、「今回の米国株下落で批判が集まったのでは?」と憶測を呼んだ。

 しかし、それは株式投資の経験のない人が、いかにも思いつきそうな理由だ。株経験者なら、そうは考えない。確かに米国株は過去、何度も暴落を繰り返したが、それは短期的なもので200年以上で見れば右肩上がり。この期間の平均リターンは年7%、ただし、リスク(上下の振れ幅)は18・1%といわれている(直近のS&P500で18%以上下落したが…)。現状把握を放棄せず、今後も米国の金利とインフレ率を観察していきたい。