【わかるニュース】世界はすでに4極構造だ! 火種は〝米中対立〟だけではない

せめぎ合う世界情勢 露欧加わる「4極構造」の行方は?

 トランプ政権時代に口火を切り、バイデン政権になっても収まるどころか激化する米中対立。米国一極構造だった世界は、米中の2極構造に変わり、「2つの大国の間で、日本はどう立ち回るか」といった視点が共通認識ではないか。しかし、実際には世界のパワーバランスはすでに4極構造にある。米国VS中国、そしてEU(27カ国加盟の欧州連合)VS先進国最長22年目の独裁者プーチン率いるロシアだ。もっと大きく捉えれば、「自由な民主主義VSトップ独裁の専制主義」の是非だ。外敵憎悪の政治姿勢は内政失敗から国民の眼を逸らせる好材料。4極の状況をそれぞれ解説すると共に、新たな秩序が生まれる世界的状況を予見していこう。

米「失敗の本質」は?

 米ソ冷戦後、一極で世界を押しまくっていた米国。その〝終わりの始まり〟が来たのは「世界の警察」機能が弱体化したからだ。ターニングポイントは「9・11」(2001年)の同時多発テロ。テロリストによる米本土攻撃に激怒したブッシュ・ジュニア大統領が〝紛争のるつぼ〟である中東に、無謀な軍事介入をしたのが最初の間違いだった。続くオバマ大統領は逆に「戦略的忍耐」と称し、中国の南シナ海の人工島化と基地建設を黙認。「何もできないトップ」と世界からなめられた。

 昨夏のアフガニスタンからの米軍撤退に関する混乱を機に、支持率が低迷するバイデン大統領の民主党は、11月の中間選挙(上院3分の1、下院全議席)での敗北は必至。新大統領就任年の中間選挙は与党敗北が多いが、問題はどのくらい負けるかだ。仮にハリス副大統領との現職コンビが〝死に体〟になると、2年後のトランプ前大統領の再登板は現実味を帯びる。

 トランプは日本で言えば〝小泉ブーム〟に似ている。大衆に人気があるが、保守本流の共和党幹部と一枚岩ではない。世界中が共同歩調を取る地球温暖化対策では、その存在すら否定する究極の大衆迎合型のワンマン政治家だ。米国内はこうしたせめぎ合いに混沌としている。

 米国の失敗の本質は、特定富裕層だけがもうかり貧富差が超拡大した「金持ちの金持ちによる金持ちのため」の新自由主義経済の行き詰まり。すべては米国主導の世界の終わりを示している。

ほころびる中国

 中国は終身政権を目指す習近平国家主席の神格化が進む。4000年の歴史の中で共産党を最高の存在と位置付け、全国民を監視して従わせ一切の異議反論を許さない。

 経済政策に自信を持つ中国。産業政策では「中国製造2025」を掲げ、次世代情報技術や新エネルギー車など製造業を高度化。日韓を含めた世界中の優秀な頭脳や技術者をスカウトして自国内での完結を目指している。

 途上国にはジャブジャブの資金貸し付けで一帯一路(陸海の21世紀型シルクロード)に取り込む。

 最近は西側メディアなどでウイグル族の強制労働問題が報じられている。こうしたチベットやウイグルなどの少数民族抑圧政策の裏にあるのは、ソ連崩壊後に見たトラウマだ。ソ連邦を構成していた国々が西側につき、ロシアに敵対していく歴史を目の当たりにしたからだ。

 そう捉えると、一国二制度を無かったことにした香港や、軍事挑発による台湾有事の演出など、「一切外敵の要求には応じない」という内外アピールの姿勢が腑に落ちる。

 その中国も経済でのほころびが目立つ。①改革解放経済の行き詰まり②少子高齢化で労働人口が縮小③貧富の差が拡大─と、負の連鎖が起きている。

 現在、先進国を相手に四面楚歌状態にある中国にとって、対日外交は極めて重要だ。日本にとっても中国は最大の貿易相手国だから、両国は共通利益の拡大を示す「戦力的互恵関係」にある。ちなみに今年は国交正常化50周年だ。

露が目指す「偉大なソ連」復活

 プーチンは旧ソ連崩壊について「領土の4割を失い、100年の努力がむだになった」といい、復活を目指している。外堀だった東欧諸国はNATOに加盟して敵となり、内堀に当たる旧ソ連領ウクライナの問題ではこれ以上譲る気はない。

 わずかな政敵やメディア批判を一切許さない強権性で報じられているプーチン大統領は、国内で圧倒的な人気がある。帝政ロシア、ソ連と続いた強い指導者を好む国民性とも合致する。ナポレオン侵攻の時代から西欧諸国とは常に相性が悪い。

 キューバ危機で海上封鎖した米国の立場を当てはめると、ウクライナへのNATO軍配備をロシアが容認しないのも理解できる。ロシア人にとって、同胞が多く住むシリアやウクライナへの介入は国内問題感覚とも言える。EU各国、特にドイツは天然ガス供給をロシアからのパイプラインに依存しているから簡単には手を出せない。

 最も長い国境線を接している中露は伝統的に理解し合っている。仮にロシアのウクライナと中国の台湾への侵攻がほぼ同時に行われれば、米介入が軍事的はもちろん、経済的にも困難になる。

域内格差に悩むEU

 各国が地続きの欧州は、中世から侵略と奪回の歴史だった。一団となって地政学的脅威のロシア、経済的脅威の米国と対抗するためにできたのがEUの前身EC(欧州共同体)だ。域内移動は自由になり関税も撤廃、通貨もユーロに統一。先進各国からは資金が、途上各国から資源や労働力がそれぞれ流動化した。先進国側の不満が次第に溜り、英国離脱を招いた。多くの国で大衆迎合な愛国主義が台頭、政権流動化が進む。もともと米国のような拝金主義国は少なく、社会民主主義(高福祉高負担など)の環境対策で世界をリード。脱炭素化への〝持続可能なエネルギー〟として天然ガスや原子力にまでお墨付きを与えるなど、実態は背に腹は代えられずご都合主義も目立っている。

 最大の問題は、アフリカや中東から果てしなく流入してくる難民移民。先進国側は域内移動だけでもうんざりで、「これ以上は受け入れたくない」が本音も人道上完封できず頭を抱えている。

次世代の秩序とは?

 世界が4極の情勢を示す中で、日本はどう立ち回るべきか。外相経験が長い岸田首相は「欧米はもっとしたたかで表面だけ見ていると誤る。われわれももっとしたたかにやらないと」と述べた。外務省は親米と親中がせめぎ合う。国防は米国が唯一でも経済では中国重視だからだ。

 米中露英仏5カ国は核戦争阻止へ共同声明を出し、気候変動対策も共通テーマ。

 世界中は長引くコロナ禍で、労働力が必要な製造業と高い技術の少数エリートが操るIT分野の産業2極化が進む。「敵の敵は味方、敵の味方は敵」という単純な離合集散より、互いに分担し合い地球上の繁栄を享受する〝21世紀型秩序と序列〟確立はいつになるのか?