不適合は震度6弱で倒壊 ブロック塀の耐久実験

 2018年6月に発生した大阪北部地震でブロック塀が倒壊し、女子児童が死亡した。以降、各自治体は「ブロック塀」の撤去に補助金を支給するなどし、安全確保に努めている。ところで、全てのブロック塀が危険なのか。このほど、大型地震を再現する施設で実験が行われた。(加藤有里子)

「E―ディフェンス」で行われたブロック塀の耐久実験。加振から10秒ほどで中央のブロック塀が倒壊した=兵庫県三木市

 兵庫県三木市の大型地震再現施設「E―ディフェンス」で10月16日、国立研究開発法人防災科学技術研究所(茨城県つくば市/以下、防災科研)と大林(だいりん、岐阜県郡上市)が共同で、ブロック塀の耐震性や安全性を検証する実験を行った。
 用意されたブロック塀は全部で8種類。内訳は建築基準法適合が6種(学会基準を満たした4種、新たな構造で施工した2種)、建築基準法不適合が1種、建築基準法不適合に耐震補強したもの1種だ。

命を守ったケースも 「ブロック塀が全て 悪い訳ではない」

 実験は震度5弱の揺れからスタート。震度6弱の揺れになったところで、不適合のブロック塀が倒壊した。他の7種類に関しては、震度6強を加振しても倒壊しなかった。倒壊した1種類は大阪北部地震で倒れたものと同じ性能にしたという。
 今回の実験では、基礎部分、ブロック塀部分ともに新築で製作されている。大林の片桐賢さんは「ブロック塀が全て悪いという訳ではないが、不適合の塀に関しては築年数に関係なく危険。それらが身の回りにたくさん存在することを知ってほしい」と話す。
 防災科研地震減災実験研究部門の佐藤栄児主任研究員は、「建築基準法に適合したブロック塀については、地震発生時に、家の下敷きになるのを防いでくれたり、津波の防波堤になったりすることもあった」とこれまでの例を挙げる。
 では、ブロック塀はどれくらい持つのか。耐用年数は30年と言われているが、常に風雨や気温の変化にさらされている。このため、水の浸入などでひび割れたり、鉄筋がサビたりして強度が低下する。同実験では、全て新築ブロック塀が使用されたが、年数の経った建築基準法適合のブロック塀でも倒壊する可能性があると言える。

「共有ブロック塀」 大阪に多く存在

 大阪市では大阪北部地震から1カ月後に補助制度「大阪市ブロック塀等撤去促進事業」を創設した。現在も制度を続けており、撤去・軽量フェンスなどの新設工事に必要な費用の一部を補助している。
 要件は「道路などに面し、安全性の確認ができない、高さ80㌢以上のブロック塀など」。補助対象は、高さ80㌢未満となるよう撤去する工事と、撤去した範囲内で軽量フェンスなどを新設する工事。隣地境界に建つブロック塀は対象外としている。
 18年度に開始してから、22年度までに活用されたのは551件。補助金の算定例については、下表を参考にしてほしい。市では「大阪市立住まい情報センター」4階で相談を受け付けている。

※大阪市都市整備局への取材を元に作成


 前述の片桐さんは「大阪には、隣地と境界ブロックを共有している『共有ブロック塀』が多く存在する。これも解体が進まない理由の一つ」と話す。また、狭小地などで解体できないケースなどには「補強」という選択肢があり、解体するよりも費用を抑えられる場合もあるというが、周知されていない現状がある。
 9月には福井県鯖江市で、通学途中の男子児童がブロック塀を手でさわったところ、倒れてきたブロック塀にはさまれ、足の骨を折る大けがをする新たな事故が発生した。鯖江市役所によると、所有者は補助金制度を知らなかったという。
 佐藤主任研究員は「事故は特別なことではなく、いつでも起こり得る。自宅や周囲の塀に関心を持ち、対策を考えてほしい」と熱く語った。