異次元の少子化対策 扶養控除廃止なら「増税」 財源をどう捻出するのか不透明

異次元の少子化対策 扶養控除廃止なら「増税」

 岸田文雄首相を議長とする「こども未来戦略会議」で「次元の異なる少子化対策」の方針が決まった。2024年10月分から児童手当を拡充することが表明されたが、財源の確保策については年末に先送りされた。戦略方針に①所得制限の撤廃②支給対象年齢を「高校卒業」までに拡大③第3子以降の加算は3万円に増額―を明記したが、財源がどう捻出されるかが不透明だ。子育て世代のなかには扶養控除の縮小などで負担増になる人たちや、家族構成によっては支給額が増えない人たちも出てくる懸念も指摘されている。

鈴木財務相「扶養控除との関係を整理」
家族構成によっては支給額が増えないケースも

 現行制度では中学生までとなっている児童手当の支給対象について、「高校生にも月1万円支給」と戦略方針で明記されたが、児童手当が高校生まで拡充される場合、政府は「(16歳以上18歳未満の子どもがいる家庭に適用される)扶養控除との関係を整理する必要がある」(鈴木俊一財務相)と縮小を含め見直しを検討する方針だ。

「扶養控除」の縮小

 現行制度での扶養控除はどうか。16歳以上19歳未満の子どもを扶養する場合、適用を受けられる。高校生の子どもを扶養する世帯では、「子ども1人につき38万円」が所得から控除される。

 新たに高校生の子ども1人につき月1万円(年間12万円)の児童手当を支給すると、児童手当は課税対象でないため、政府にとっては歳出が増えるだけで所得税の収入が増えない。このため、高校生に適用している「38万円の扶養控除」の縮小を含めた見直しが浮上しているという。

 所得税は累進課税で、所得に応じて5~45%の税率が課されるが、各種の控除があり、そのうちのひとつが扶養控除。住民税も、控除額が所得税とは若干異なるが、課税所得金額の約10%の税額。38万円の扶養控除(住民税では33万円)がなくなれば、所得税と住民税のダブル増税になる。

年収1000万円なら「マイナス」

 年収が多い家庭では、児童手当の拡充よりも扶養控除廃止によるマイナスのほうが大きく、負担増になるケースもある。年収いくらの人の課税所得がいくらになるかは、医療費控除や生命保険料控除の有無などによって変わってくるが、高校生の子ども1人分の扶養控除がなくなった場合の税額をシミュレーションしてみると―。

 年収800万円の人は所得税率20%で約10万9000円の増税、年12万円の児童手当があってもほぼプラスマイナスゼロ。年収1000万円の人なら約15万4000円の増税、完全にマイナスとなる。児童手当の所得制限廃止を打ち上げながら一方で、一定以上の所得者にはむしろ増税になるような巧妙なバランスの取り方だ。

「第3子加算」は注意

 第3子以降の子どもの3万円に加算も「注意」が必要だ。というのも3人きょうだいのケースでは1番目の子どもが高校を卒業すれば、2番目が「第1子」となり、3番目が「第2子」として扱われる。政府は「扶養する児童・生徒のための経済支援」との立場から第3子への加算が受け取れなくなるという。

政府拡充案