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【記者の投資勉強会】トランプ大統領は大まじめ 実は財政規律を目指す政治家だった!?

トランプ大統領の〝本当の狙い〟は?

 トランプ相場による金融市場の乱高下。同氏が繰り返す関税の発動と延期の理由は何か? 大手メディアは「国内産業の復活」「貿易赤字を減らす」が目的と報道しているが、本当の狙いは「利下げ」ではないかと邪推している。いまの米国に起きていることの原理原則を知って、株価の乱高下に備えたい。

 大胆なことを書くと、「金利を下げる」ためなら株価暴落も厭(いと)わないのではないか―。そう推測する理由はこうだ。

過去最大9・2兆円の債務借り換え

出所:The Kobeissi Letter

 今年、米国の政府債務が36兆㌦に達した。このうちの9・2兆㌦の米国債が満期を迎える。さらにこの9・2兆㌦のうち、約7割が今年の前半に集中しているという。財政を運営する上で米国債の借り換えをする必要もある。これは借金であるので利子がつくのだが、現在の米国債の利回りは4%台である。加えて、国債を新規発行すると供給が増加してしまうので、金利のさらなる上昇を引き起こす可能性がある。トランプ大統領はなんとしてもこの金利を下げたいのだ。高金利の中、米国債の借り換えをするだけでも約1兆㌦の利払い費があるという。

 乱暴な言い方だが、金利を引き下げる最も手っ取り早い方法は「不況」なのである。米税務長官のベッセントは「われわれは政府支出に病みつきになっていた。この先はデトックス(解毒)の期間になる」と発言している。思い返せば、DOGE(政府効率化省)を率いるイーロン・マスク氏は当初より、「私たちがこれをやらなければアメリカは破産します」と述べていた。

朝令暮改もとい、朝令〝昼〟改の裏にあるものは?

 3月から下落傾向だった米S&P500が4月9日、プラス9・5%高と2008年以来の上昇率を見せた。これは、「90日間の関税延期措置」の発表があったためと記憶している人も多いと思う。しかし、この裏には、「中国や日本の機関投資家が大量に米国債を売却している」という偽ニュースが流れていた。それほどまでに米国の金利(=10年債利回り)が上昇していたのだ(債券が売られると金利は上昇する)。つまり、これまで金利を下げるために政策を進めていたはずなのに、想定外の金利上昇となった。9日といえば当初から決められていた関税の発動日だ。しかし、その日のうちに、一転して発動延期を発表。もはや朝令暮改どころか、朝令〝昼〟改のレベルである。

 18日、米中央銀行FRBのパウエル議長に対して、トランプ大統領は「対応が遅すぎる、FRBは利下げをするべきだ」と、解任を示唆することまで言及した。一方、FRBが利下げをするか否かの判断基準としているのは、インフレ率と雇用統計だ。一方で、トランプ大統領の関税政策は国内の再インフレを引き起こすと懸念されており、両者の思惑は平行線だ。しかし、市場は年内2〜3回の利下げを織り込んでいるのだが、ここにトランプ氏の金利に対する苛立ちを感じる。

 いまはベッセント氏がいう米政府債務のデトックス期間なのだろう。この間の株は上がりにくいが、景気後退を受けて長期金利を低下することに成功すれば、まさにトランプ政権の思い描いた通りになるかもしれない。そのときは、トランプ氏が株式相場を下支えをする日がくるかもしれない。個人投資家としては、トランプが何を言っているかではなく、何をしようとしているのか、現実に何ができるのかを冷静に判断する必要があるだろう。