
塩野義製薬は19日、大阪市北区のグラングリーン大阪 パークタワー(うめきた)に移転する新本社(グローバル本社)をメディア向けに公開した。新本社は24~26階の3フロアに設けられ、約1,100人を収容する規模。同市中央区・道修町(どしょうまち)の「大阪本店」機能は残しつつ、グローバル拠点としての運用を強化する狙いだ。移転日は11月27日。公開説明会では代表取締役会長兼社長 CEO 手代木 功氏が登壇し、新拠点への期待を語った。

今回の移転は、社員がより働きやすく健康的に過ごせる環境を整え、グローバル市場での一層の成長を後押しすることを目的に設計された。総延べ床面積は約1万2000平方メートルで、これまで分散していた4拠点を統一。2027年4月に吸収合併を予定する子会社シオノギフォーマや、鳥居薬品の機能も順次集約する。
オフィスは単なる執務空間にとどまらず、イノベーション創出を意図した「オープンなオフィス環境」を前面に打ち出している。24~26階を貫く中央部は一部を吹き抜けにして2本の階段を設置。上下階を自然につなぐ2本の「連絡階段」は、移動手段であると同時にコミュニケーションスペースと一体化させ、従来のビルイン型とは一線を画す設計だ。コミュニケーションエリアは5大陸をテーマに分けられ、社員や来訪者が集い議論を交わす場を意図している。

新本社の設計コンセプトは「FACE」。手代木社長は説明で、〝仕事に向き合う、人生に向き合う、笑顔に出会う〟を掲げ、人への投資を重視する姿勢を示した。「健康に奉仕するという社是を、薬だけでなくヘルスケアソリューションとして提供したい。創業150年を迎える中、これからの10~20年は不確実性が高く、長期にわたる投資が必要だ」と述べ、今後のグローバル戦略に向けた体制強化を強調した。
手代木社長はまた、移転に際して道修町の意義を繰り返し確認した。道修町は今後も大阪本店として残し、同社の〝ソウル〟としての役割を保つ考えを示した上で、今回の集約により全社員が一堂に会する機会をつくり、飛躍への契機としたいと語った。「〝大阪発、世界にこだわりたい〟という思いでオフィスをデザインした」と述べ、大阪を拠点に世界で戦う企業を目指す決意を示した。
新本社には、不測の事態に耐えうる本社機能の強化も盛り込まれている。柔軟な働き方へ対応するための設備や、外部とのコラボレーションを見据えた会議・交流スペースを充実させ、うめきたという立地を生かして企業や研究機関との連携を強める方針だ。働き方改革の一環として、健康面を支援する施設や、社員の生産性と創造性を高めるためのレイアウトにも配慮しているという。
公開されたオフィスツアーでは、来訪者が視認できるフォーマルなエントランスや多目的ミーティングルーム、オープンラウンジなどが紹介された。コミュニケーションスペースは国際色を意識し、各テーマごとに異なる意匠を採用。海外の取引先や研究者を迎え入れる場としての役割も想定されている。


今回の移転は、同社が掲げるヘルスケア領域でのソリューション提供を加速させると同時に、グローバル競争力の向上を図る象徴的な一手と位置づけられる。手代木社長は締めくくりに、「未来に向けて投資するタイミングだ。人への投資を通じ、異なる知見を取り込みスパーク(創発)させたい」と述べた。
塩野義製薬は創業からの歴史を尊重しつつ、新たな拠点で大阪発の革新的なヘルスケアソリューションを世界の患者やその家族に届けることを目指す。今回の本社移転はその象徴であり、今後の事業展開と組織の一体化に注目が集まりそうだ。
