島根県松江市で9月21~23日に行われた全日本軟式野球連盟が主催の「髙松宮賜杯第68回全日本軟式野球大会(B級)」で、大阪府代表チームとなった「NINE GROUP」(ナイングループ)の「Baseball Team NINE」が決勝戦で東京都代表の「TOKYO UNICORN」を6対0のスコアで下し優勝を果たした。
同チームは2022年4月創設後、元オリックスバファローズの宮﨑祐樹さんが監督を務め、怒涛の勢いで勝ち続けてきた。ことし5月に住之江公園野球場で行われた大阪府予選を勝ち抜き大阪府代表として出場。今回の優勝を経て、大会後はA級にステージを移す。
大会を終えてキャプテンの金川栄介さんは「去年はベスト4で負けて、決勝に上がれなかったので、今年は何としても優勝してA級へという思いが強かった。僕も野球部の活動以外の業務で障がい福祉事業の支援員として日頃応援してくださっているご利用者様たちと関わっているので、支援する立場でいい加減な姿勢で野球に取り組むわけにいきません。また、勝利することで応援してくださっているご利用者様やその周りのご家族も幸せにできると思っています。そのためにも『優勝は絶対』だったので、今はホッとしています」と振り返った。
同社は小学3年生の時から野球少年だった久保田健治さんが2012年に創業。少年野球時代の仲間と共に京橋で飲食店からキャリアをスタートした。企業名「NINE GROUP」のNINE(ナイン)からも野球を連想する屋号にした。加えて、「関わる全ての人を幸せにする」を理念に掲げ、根っから野球少年だった久保田さんが大好きな野球仲間を募りながら、事業を拡大してきた。
久保田さんは「去年準決勝で負けて悔しくて…。それからは体力づくりからやり直したので、試合運びを見ていても危なげなく勝ち切ってくれました。会場となる松江市近辺の障がい福祉事業所も訪問して、利用者さんとキャッチボールをしたり、充実した時間を過ごせました。選手たちの応援に来てくれた方にも勇気を与えることができたと思います」とねぎらった。
キャプテンの金川さんは障がい福祉の現場で学んだ気づきをチーム運営にもうまく生かしている。「大学時代でもキャプテンをしていましたがその頃は一方的に指示を出していました。今ではご利用者様と関わることでどうしたら失敗を未然に防げただろうという考えに変わり、選手への声掛け一つにしても相手を思いやるようになりました」と話している。金川さんが同社に入社したのは「野球ができるから」と志望動機は他の野球部員も同様の極めてシンプルな理由だったそうだ。
同社の福祉事業にも特徴がある。野球部で使うボールやバットの手入れをしたり、プロ野球選手が使って折れたバットを引き取り、靴ベラに加工するなど野球好きにはたまらない取り組みを行っている。
利用者も一体となって野球部を応援する体制になっており、大阪の大会では平日の試合であっても500人ほどの応援団が球場を埋め尽くす。野球を通じて福祉を変える独自の事業体で成長を続けている。