─万博が観光産業に与える影響は。
万博やUSJ、その後のIRも大阪中心部から少し離れている。来場した人をどう市内観光につなげるかが重要。市内での滞在や体験がリピートに繋がるわけだから、万博やIRだけが目的にならないよう進めることが大切だ。
昨年は観光産業全体の課題が悪化した年だった。訪日客宿泊者の75%は東京や大阪、京都、北海道、福岡の5つに集中し、地方は経済効果を実感できていない。
万博を訪れた訪日客を地方に分散させるためにも、地方自らが万博と連携し、情報発信していくことが重要になる。
─関西では外資系ホテルが続々と開業している。
外資系が積極的に日本に進出しているというより、不動産投資会社などの招致をする側の影響が大きい。
ホテルは増えているが、供給過多とは見ていない。世界のどの都市も供給過多と供給不足を繰り返すことで発展してきたから、一時的な供給過多であり不健全な状態ではない。こうした競争状況は違う業態や新サービスを生み、関西エリアのホテルの進化に繋がるチャンスとも言える。
傾向的に外資系ホテルはすでに需要のある地域へ進出する。一方、我々は需要のないところに需要を生み出すことが得意だ。新今宮のケース(OMO7大阪)もそうだが、世界に知られていない、まだ日本人の需要も少ない場所にどうやって観光需要を作っていくかを我々は地域と共に進めている。同じ業界にいてもアプローチが異なる。
─円安で伸びた訪日客需要。来年や再来年の旅行需要を先食いした懸念もある。
円安や円高に左右されないためにリピーターづくりが重要だ。〝一生に一度行けばいい国〟では早晩、先細りしていく。
米ニューヨークのミュージカルや、オーストラリアが夏休みにスキーに訪れる日本の雪山などがリピーターづくりのヒントになる。〝昨年より何人増えた〟の時代から、〝訪日客のうち何人がリピーターだった〟の指標が大事になる時代が来ると思っている。
─観光産業は人材不足だ。
一番の原因は年俸の低さにある。年末年始やGWなどに需要が集中し、年間100日は黒字だが、残り265日が赤字という産業構造が問題だ。
解決のカギは需要の分散だ。例えば、期間中に愛知県の施設が無料で利用できたり、県の魅力を発信するイベントが繰り広げられる「あいちウィーク」のような取り組みを全都道府県がやれば、需要が分散し観光業界の収入の改善に繋がる。
人員不足に対しては、新しい人が来てくれないことを嘆くより、今いる人を大事にすることが重要。その延長線上で業務内容をスタッフ視点で変えていくことも大事だ。従来の顧客視点に加え、スタッフの仕事のしやすさ、スタッフはどんな顧客が好きなのか…。つまり、スタッフが好きな客層にマーケティングを絞るなどすれば、仕事に楽しさややりがいを持たせることができる。
経営課題があることは、競合と戦略的な差をつけやすいことでもある。