「そもそも金利がマイナスって何?」と思っている人は多いのでは。言葉をそのまま受けると、借金をしているのに利息が付いてくるということ。であれば、ジャンジャン借金した方がお得のはずだが、実生活の中でそういうことはない。実感できないから「意味がわからない」という人も多いのでは。筆者のその一人であったので早速調べてみた。
実感できないのは、「マイナスの金利」が対象になるのは日銀と民間銀行の間だけの話であるからだ。民間銀行は日銀に「当座預金」という名前でお金を預けている。このお金の一部にマイナスの金利がかけられているのだ(日銀当座預金の三層構造より)。つまり現在、民間銀が日銀にお金を預けていると手数料のように預金金利(0・1%)を支払わなければならないのだ。このため民間銀は日銀にお金を預けておくよりも、民間企業に融資した方がよいのだ。つまり、景気促進策であった。
金利の世界はおおまかに短期金利と長期金利に分けられる。短期金利は日銀が政策金利で決めることができる。一方、長期は市場(マーケット)に連動して決まる(日々動いている)。しかし、日本は世界でも異例の金融政策を行っており、〝短期と長期の両方〟の金利をコントロールしている。これをイールドカーブコントロール(YCC)という。
では、それらが実生活にどう影響するのか。一般的にお金を長く借りるほど、利子が高く、短いほど低くなるもの。住宅ローンも借りる期間が20年や30年と長いもの(全期間固定で約1・8%)ほど利子が高くつくが、短期金利に連動している変動金利(約0・4%)はそれよりも低いはずだ。
本題の「マイナス金利政策の解除」は短期金利のことなので、変動金利が対象となり、多少上昇する可能性がある。しかし、「グングン金利が上がってくるのか?」については、そんなに心配はないだろう。
理由は2点だ。①米国の金利と比較して日本の金利変動は僅少だ。インフレ下でも景気が強い米国でさえ、1回の利上げにつき、約0・25%〜0・50%ずつだった。今の日本経済が米国のように何度も利上げできる経済状況なのか? ②利上げは一般的に経済活動を冷やすために行う。物価高騰で今年の春闘は賃上げに成功しているが、大企業に限定されている。日本の大企業(従業員数)は約3割で、残り約7割の中小企業の従業員は賃上げを実感できていない。マイナス金利を解除した後、「プラスの金利」へと利上げを行うというストーリーよりも、このままの現状を見守るか、金融緩和が継続される見込みの方が高いだろう。