医療機関が快眠マッサージ付きの旅館を運営 休息・栄養・運動から健康追求 オルソグループ

囲炉裏のある情緒豊かなロビーラウンジ

 医療・介護事業者オルソグループ(大阪市西成区)は快眠セラピストによるマッサージ付き旅館「御宿コトブキ」を運営している。場所は兵庫県北部の湯村温泉郷。全16室の小ぶりな施設だ。

 同社は天下茶屋に本部を構え、病院や老人ホーム、スポーツジム、飲食店など多角展開している。休息、栄養、運動、手技療法、地域医療を柱として健康管理を理念として、他の医療機関と一線を画している。鞆浩康グループ代表は、西洋医学に偏った国内の医療体制に疑問を持ったことから健康について追求し、その一環で「御宿コトブキ」を開設した。

日本の医療体制に疑問符 自身で健康管理する文化へ

食事は地産の魚介などを囲炉裏で楽しめる

 宿泊者に睡眠、食事、運動をとおして体を整えてもらおうと、「命を洗おう。生まれ変わりの宿」をコンセプトにしている。そのため、同社独自の快眠技術を身に付けたセラピストによる睡眠改善サービスマッサージを通常の宿泊プランに盛り込んでいる。

 食事には、地産の魚介、野菜など旬の食材を活かした料理を提供。囲炉裏で楽しむ造りにしている。快眠がテーマのため、アルコールを自粛しなければならない旅館かと言えば全くそうではない。ソムリエも常駐し、ワインや地元兵庫の日本酒など豊富にそろえている。週末にはラウンジをバー営業するほどの充実ぶりだ。

 運動面については周辺をウォーキングすることで睡眠の質を高めてもらうとしている。

 湯村温泉は源泉温度98度と日本一を誇ることから、眠りが深くなるよう40度に調整している。シャンプーやシャワーヘッド、ドライヤーにもこだわりをみせる。

 さらに、廊下や室内は、宿泊者に目や脳を休めてもらうため日中も照明を100Hz以下と暗めに設定している。

 客室は「藤紫」「市松」など歳時記の色彩をテーマに、スイート、ジュニアスイート、ツイン、和室から成る。ターゲット層は50代〜70代の健康意識の高い大人とし、中学生未満の宿泊は不可。宿泊費は2万5000円だがスタンダードな金額だが、カニなどシーズンで変動する。宿泊者の属性は50〜60代の夫婦や母と娘、女子などで、大阪や兵庫県からが8割を占めている。

破産した地元旅館を買収・リノベーションし開設

医療・介護に加え、食や睡眠まで総合的に健康をサポートする企業を目指す鞆会長

 同社が22年5月にオープンするまで、地元の事業者が50年近く旅館を運営してきたがコロナ禍で破綻。買収後、全面リニューアルしたという。「有名な温泉街に比べて観光地が少ない上、町全体が観光客受け入れに消極的だったため減退を加速させたと思う」。

 コロナ禍でのオープンで当初は苦戦したが、リピーターや口コミで広がり、経済産業省や観光庁、内閣府などの後援で実施された「温泉宿・ホテル総選挙2023」において「おこもり」部門全国1位を獲得した。鞆会長は「医療・介護にとどまらず、食や睡眠まで健康を総合的にサポートする企業を目指すしたい」と話す。

(加藤有里子)