相続放棄せず、田舎の実家を処分できる?
4月スタートの相続土地国庫帰属制度

“負動産”はコレで解決? 新制度「相続土地国庫帰属制度」とは?

 「相続土地国庫帰属制度」は親が残した〝いらない〟不動産に悩み苦しむ子孫の救い主となるだろうか。詳しく見てみよう。

 最初に注意すべきは、国が引き取ってくれる制度だが、何でもかんでも引き取ってくれるのではなく、一定の条件付きで、国の審査に合格する必要がある点だ。

 対象となる不動産は、建物が建っていない「土地」に限られ、もし建っている、あるいは何か残置物があれば「解体」や「撤去」を済ませておかねばならない。そして、その土地には抵当権賃借権などが付いていないことや、他人の利用予定がないこと、隣地との境界が確定し、帰属などの争いがないことと、審査要件が多い。もちろん制度は「相続」や「遺贈」で取得した土地が対象で、親が元気なうちに名義変更されたものは対象外。複数の相続人で共同所有している場合は全員で申請する必要がある。

 さらに崖地や地下埋設物がある土地などの状況も判断材料とされるため、必然的に現地調査やそれらへの立会なども必要。審査には手間も時間もかかり、数カ月単位の時間を要するだろう。つまり「すぐ手放したい」人には向いていない制度といえる。

 さて要件審査をクリアした。「これで一安心」ではない。土地は国が引き取ってくれるが、タダではないのだ。地目や面積、環境などに応じた金額を「土地管理費」として負担しなければならない。10年分の事前納付が必要で、具体的な算出方法は不明だが、「国有地の管理例などから20万円程度ではないか」が専門家の意見だ。山林の場合はさらに管理コストがかさむと言われ、負担金はアップしそうで、10万円ほどの審査手数料に家の解体費など、金がかかるというデメリットを知っておかないと、悔やむことになりそうだ。

 同制度は、放っておいても手間も費用もかかる、誰も欲しがらないものを、要件さえ満たせば国が確実に引き取ってくれる。引き取り手を探す必要がないうえに、国であるため安心だし、損害賠償責任だって「一般の人が気づかないような問題が後に発覚しても、利用者が責任を負うことはない」(のぞみ相続税専門相談センター・三宅俊之課長)などのメリットがある。

 そのうえ最近は不要な不動産を有料で引き取る会社が増えている。なかには詐欺まがいの悪徳業者もいるので、その点の安心感は大きい。

 大阪市内などで空き家を資源としてリユースする活動を積極的に展開している1級建築施行管理技士は「市内でも、1人住まいのお年寄りが施設に入られたとか、相続した兄弟間で話がつかないなどで空き家は結構ある。しかし、市内の場合は使い道がないケースはほぼない。やはり遠い実家なんかだろう」と〝負動産〟問題を指摘する。

 また〝のぞみ相続センター〟の樫木秀俊副代表は「空き家の発生を抑えるため、譲渡所得の3000万円特別控除を4年間延長するなど、いろいろと来年度は税制が見直しされる。改正で適格な対応(〝損得〟の分かれ目)が求められる」と説く。

 今後、相続が大量になる時代を迎えるが、相続や税制は大きく変わる可能性も指摘されており、やはり詳しい専門家に相談することが〝得策〟になりそうだ。