【外から見たニッポン】枠に囚われない生き方

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 先日、大学時代の友人がFacebookに投稿した書き込みをみました。「19歳になる息子が有名なジャズトランペッターのチーフ・アジュアのバンドの一員と一緒にアジアツアーに出る事になり、東京のブルーノートでも演奏するので、機会があれば見に行ってやってくれ」という様な内容だった。

 息子くんが小学生の頃からいろいろなステージに立ったり、同年代でも世界的に有名な演奏家と一緒に演奏したり、と早くから機会に恵まれ才能を開花させていた様ですが、まさかこの年齢で世界ツアーに出るとは。

 こういうのがアメリカの魅力なのです。そこかしこにチャンスが落ちていて、いろいろな大人が才能のある子供をサポートしたり、機会を与えて引き上げてくれます。そこには人種も性別も年齢もあまり関係ないんです。

 この息子くんも九州男児とキューバー移民の娘から産まれた子供で、見た目は両親の特徴がうまく融合された感じで、生粋の日本人でもなければキューバー人でもありません。

 この息子くんは、あちこちで他の演奏家とセッションしたり、トレーニングプログラムやジャズのサマーキャンプに参加したり、才能のある演奏家に誘われてスタジオで一緒に練習したり、と言った具合に、どこかに属するのではなく、あらゆる機会を利用して演奏を続けていました。

 こういう土壌がある事で、才能が開花し、世界へ飛び立つ様な若者が出て来られるのです。

 山の様に問題を抱えているアメリカ社会ですが、こういうプラスの側面もあるのです。日本では、そう簡単に名もないミュージシャンが、それもティーンエイジャーが名前の売れているミュージシャンと一緒にセッションしたり、ましてや世界ツアーに出たりと言う事はちょっと考えられません。しかしその分、お金がなくても学校のクラブに所属する事で楽器を提供してもらって演奏する事ができたりします。

 「みんな平等」を目指す日本と「頑張った人はそれだけチャンスも成果も得られる」とするアメリカ。どちらが良いかというより、どちらが自分に合ったやり方なのか、だと思います。
こういうところにも社会主義的思想と資本主義的思想が影響している訳です。

 AIが進化して、人間が行っている多くの作業をこなす様になる事は間違いなく、人間がやれること、やるべきこと、やらなければならないことが何かを考えたとき、「人として生きていく上で必要な事は何か」が重要で、平均的な生き方より、自分のやりたいことを追求出来る独創的な生き方の方が、これからの世の中にマッチするのではないかと思います。

 日本は暮らしていくには素晴らしい国ですが、独創的に生きたり、より多くのチャンスに巡り会おうと思うと、なかなか大変かもしれません。これからどう生きるかは、Howだけでなく、どこで生きるかもこれまで以上に影響してくるかもしれません。

 友人のコメントは「生活費は稼げているので、あとは大学の学費も稼いでもらおう」と締められており、どこにいても親が思う事は同じだと共感しました。