
「アルデ新大阪」交通拠点から普段使いの場所へ
大阪の玄関口であるJR新大阪駅。ビジネスマンや国内旅行客のほか、2024年に過去最高数を記録したインバウンド客が行き交う交通の要所だ。駅ビル2階にある商業施設「アルデ新大阪」にもその利用客が絶えないが、意外にも地元住民の利用も多く、彼らの日常に溶け込んでいる。(植田佑玖)
大阪・関西万博の開催に向け、大阪市内では活発な都市開発が進められている。昨年9月に先行まちびらきしたJR大阪駅直結の都市型公園「グラングリーン大阪」を筆頭に、「イノゲート大阪」や「KITTE大阪」の開業(7月)、そして3月21日には「うめきたグリーンプレイス」がオープンを迎えた。
駅ナカ施設の意外なデータ
市内施設のオープンラッシュとは一線を画し、アルデ新大阪は地域住民との結びつきを深める戦略へとかじを切った。「新大阪という立地上、ここを目指して来られるお客さまは少ない。だからこそ、この場所と生活が紐づいている方たちに目を向けました」と語るのは、施設を運営する新大阪ステーションストア常務取締役の田畑潤さん。旅行客やビジネス層だけでなく、地域住民が日常的に利用できる店舗・サービス展開を加速させている。
2024年1月の駅利用者調査がその戦略を裏付ける。新大阪駅利用者の居住地は約65%が近畿圏で、(表)平日の駅利用者の約40%、休日においては約70%が「家事私用」目的で訪れており、特に「買物・飲食」を目的とした近畿圏居住者の利用が定着している事実が明らかになった。

これまでPC用品や旅行グッズなど交通利用客向けの商品を中心に展開していたが、地元住民の来店が予想以上に多いというデータは、アルデ新大阪にとって新たな可能性を示した。新大阪駅を最寄りとする住民たちが、通勤や外出のついでに日用品を手に取る姿が日常風景となっていたのだ。
普段使いされる場所をめざして
ドラッグストアのKoKuMiN(コクミン)アルデ新大阪店の内田さんは「これまで難波駅や京都駅といった主要駅近くの店舗で働いていたが、そこに比べるとトイレットペーパーなどの日用品の売り上げが多い」と語る。通勤・通学の帰り道に立ち寄り、生活必需品を購入する利用者の姿が目立つという。地域住民の利便性をさらに高めるため、5月からは処方せん受付もスタート予定。「調剤薬局を併設することで、駅を利用する近隣の方の健康もサポートしていきたい」と意気込む。
昨年11月にオープンした青山フラワーマーケットの店長も「ビジネス客の利用も多いですが、小さなお子さん連れの方や高齢の方が日常的にこられます。平日の昼はゆったりしているので、アルデ新大阪をお子さんたちの『散歩コース』として利用されるご家族もいますね」とほほ笑む。店長によると、新大阪駅周辺には新婚や子育て世帯が多いという。

新大阪駅は階層によって利用目的のすみ分けがはっきりとしているのも印象的。新幹線改札口がある3階はお土産売り場、1階は個人商店が多く、居酒屋などの飲食店が並ぶ。そしてアルデ新大阪のある2階は飲食店のほか、デイリーユースもできるテナントが充実している。
この特徴を生かした店舗構成も進化。昨年11月オープンのPRONTOは、昼はカフェ、夜は「キッサカバ」という酒場と業態を変え、幅広い層に利用されている。お土産にも自分用にも使える洋菓子店、PRESS BUTTER SANDも同月オープン。

「ワンフロアでさっと立ち寄れる」こともアルデ新大阪の強みだ。立地を最大限に生かしながらも必要なものがなんでもそろうという利便性は非常に高い。通勤ラッシュの時間を除けば、子連れで散歩もできる安心感のある場所として、地元住民から受け入れられているようだ。
地域に根ざしたアルデがあるで!
「立地×なんでもそろう利便性」という新大阪駅ならではの戦略を構築したアルデ新大阪。テナントの充実に加え「WESTERポイント」といった会員制度も導入している。「旅行客はもちろん、ここを毎日通る方に有効に使ってもらいたい。私たちは地元の方々が受け入れてくれる施設でありたいです」と田畑さんは笑顔で話す。