Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

米タイム誌が選んだ2024年のパーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)は、次期大統領のドナルド・トランプ氏。16年に続く2回目の選出でした。
さまざまなニュースがあった24年ですが、やはりこの人物抜きには語れない1年だったのは間違いありません。
日本も今年1年、さまざまな話題がありました。首相の交代や衆院選での与党の過半数割れ。多くの国民の生活がインフレで一段と苦しくなったり、金融格差が広がったり、大谷フィーバーが巻き起こったり、渡邉恒雄さんが亡くなったり…。
それでもやはりドナルド・トランプの影響力にはかなわないでしょう。特に世界に与える影響力では群を抜いているのは確実です。
トランプが勝利したことで、米国の株価は上昇し、落ち着き始めたインフレが再燃仕掛けていますが、経済自体は底堅く堅調です。25年はトランプ政権による大改革があるでしょうし、AI(人工知能)や量子コンピューティングなどが株式市場をけん引して景気は好調を維持していくでしょう。
しかし、いいことばかりではないのも事実。劇薬でもあるトランプの主義主張は、米国社会を分断し、貧富の差を拡大し、「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」という一見正当に聞こえるフレーズも「米国さえよければ良い」とも取れ、米国以外の国や人がどうなろうと知らない、と宣言しているようなもの。
犯罪件数が激増し、受刑者が刑務所に収容しきれない。そして激化する不法移民問題。教育レベルもトップクラスはずば抜けていても、一般国民のレベルは全く高くない。頻発する学校での銃撃。給料が上がってもそれ以上にインフレが進み、生活苦の人も激増。奨学金の返済に追われたり、住宅を手放す人もいます。日本のような国民皆保険制度はなく、医療費も高額のままです。

日本でもインフレがひどい、給料が上がらない、生活が苦しい、という声はありますが、米国の比ではありません。社会は安定していて、治安は良く、苦しいと言えど飢えて死ぬほどではありません。
25年を想像すると、24年から大きく変化するとは思えず、米国は強い国の復活へ向けて強引に進んでいくでしょう。その時日本はどうするのか?
石破新政権に期待は出来ず、103万円の壁も中途半端な形で問題を先送りし、株価も4万円前後を行ったり来たりで、明るい未来が見えて来ません。国や社会への不満が溜まり、異常な犯罪も増えています。
米国社会の分断にメディアが大きく寄与したのは間違いなく、特に旧来のマスメディアに加えて、SNSが大きな影響力を発揮しました。イーロン・マスクのXはその代表的な存在です。そこにAIやディープフェイクが登場し、もう何を信じて良いのか全くわかりません。
日本でもその傾向は出ており、東京都知事選から衆院選、先日の兵庫知事選とマスメディアとSNSの情報が全く相反することを伝え、有権者を分断したのは記憶に新しいと思います。
この傾向は25年はさらに強まるでしょう。これまで以上に情報を検証し、何が真実なのかを見極める能力が必要になります。
メディアは平気でうそをつくことがわかったので、自分の頭で考えて行動しなければなりません。ただ、日本のマスメディアは横並びの報道だから、現代の日本人に不得意な分野かもしれませんが、これが出来るか出来ないかは今後、大きな差を生むことになるでしょう。
また、海外からは年間4000万人近い人が日本を訪れ、日本の文化や食、歴史や自然、そして日本人の立ち居ふるまいをほめてくれています。海外にしばらく住むと感じることですが、日本は本当に住みやすい国です。海外諸国に比べ、便利で安全で、なんでもそろっていて、物価も安く、人も親切。私はこれはとても大事なことだと思います。
今後人口が減少し、経済力が落ちていっても、日本が海外の人から評価されなくなるとは思えません。私たちが日本人として持っている価値観や習慣、行動規範などを忘れない限り、海外の人たちは私たちのことを評価し、尊敬してくれるはずです。
これからは物質的な豊かさよりも精神的、心理的な豊かさがより重要になってくるでしょう。その点では歴史も文化もあり、精神性も高く、尊敬される倫理観を持つ日本は、もっと自信を持つべきです。物質的な豊かさは技術の進歩や個人の努力である程度カバー出来ます。それよりも人の内面から出てくる精神性や心理的なゆとりを身につけることがはるかに重要で、今の世の中に不足していることです。
これらを習得することで世界をリードしていく日本になることも可能なはずです。まさに、大谷翔平がそうであるように…。
世間の喧騒や無責任に飛び交う情報に惑わされないように、自分の価値観や信条を今一度見つめ直してみてください。「今だけ、金だけ、自分だけ」の言葉のように「自分さえ良ければ」でなく、「世の中全体がよくなるためにはどうするべきか」を常に考える習慣をつける。
そうすれば、他人や社会の無責任な流れに、ただ流されることなく、自分の行きたい方向へ行くことができ、また自然体に生きることが出来ます。
AI革命はインターネットが登場したときよりも世の中の仕組みを大きく変えるインパクトを持っています。25年は激変の年になるでしょうから、どう生きるか、がすごく重要です。
他人や社会のせいにしていても人生は良くなりません。あなたはどんな人生を生きたいですか?