Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

長いようで短かった大阪・関西万博が10月13日で閉幕した。私は結局、平均して2日に1回のペースで会場に足を運んでおり、終わるとさぞかし〝万博ロス〟になるかと思いきや、そんな感覚は全くない。
SDGsや持続可能性をうたっていた万博なので、閉幕後のパビリオンがどうなるのか、会場にあったモノが再利用されるのか、大屋根リングはどうなるのか、と気になることが山のようにあり、私の中で万博の取材はまだまだ続いている。
入場予約が取れなくなった頃には、パビリオンの中を見て記事を書くことはほとんど無くなっていて、一般の来場者が立ち入らないスペースで行われたセミナーや商談、関係者へのインタビューなどに取材の中心は移っていた。一般の人たちがいうところの「万博」は、私の中ではその段階で終了していたのかもしれない。
地球温暖化や海洋汚染などの環境問題、ジェンダー平等や女性活躍社会、エネルギー問題、安全保障─。最後に取材したのは、北極海の海底に通信用ケーブルを敷設することがいかに重要かというセミナーだった。通信量が今後、激増することが予想されているので、通信網を強化する必要があることや、ロシアや中東の情勢を考えると、現在の紅海を通る海底ケーブルでは信頼性が揺らいでいる、ということが話し合われた。
世界的なデジタル化に伴う通信量の増大、地政学的リスク、北極海にケーブルを通せる技術の発展や進歩、世界で協力するしか解決できない問題への取り組み─とまるで国連の会議かと思わせるような話し合いが実は、万博会場内で行われていたのだ。
温暖化や環境問題に関しては、複数のパビリオンでセミナーやディスカッションが行われ、世界中から専門家が来日していたし、ジェンダー平等もしかりで、国連で行われそうな内容も取り上げられるのが万博なのだ。
このような、万博来場者にとっては万博と結びつかないようなトピックのイベントに私は何度も参加し、それらの内容が難しくならないように、なんとか万博のテーマであるSDGsや持続可能性に結びつけて伝えようとしてきた。
記事を読んだ人がどう思ったかは知るよしもないが、万博はただ楽しいだけのイベントではないということが少しでも伝わっていたならうれしい。
