【大阪の高校受験】 トップ10校の受験に「英検2級」が必要な理由

 大阪府立高校のトップ10を受験するなら、英検2級を取っておくべきだ。大阪府教育委員会がこのほど、2022年春の公立高校入試を総括した。注目するべき点は、今年は英語のスコアが保障される英検2級などを、かなりの受験生が取得していたことだ。その数はトップ10高校で50%以上。英検2級はもはや、上位校の合格パスポートになってきている。

英検2級の優遇で、入試は何点になる?

 大阪府立高校の入試では2017年度から、英検やTOEFL iBTIELTSといった外部検定の成績を、入試得点に反映できるようになった。なかでもその中心は英検で、2級を持っていれば80%、準1級なら100%の得点を保障してもらえる。点数に置き換えると、英語の試験は90点満点だから英検2級なら72点、準1級であれば90点で換算される。当日の試験の出来映えを見て、高い方のスコアを採用してもらえるわけだ。

>>大阪府立高校の入試制度についてはこちらの記事をどうぞ。

トップ10校の受験者は、2人に1人が英検2級以上

 2017年の導入時に、この外部検定を活用したのはわずか344人。ところが6年経った今春は3491人と10倍以上に膨れ上がった。このうち大多数の2627人は大阪府立高校で文理学科を設置するトップ10高校の受験生で、10校に限れば昨年の37%から55%に急増。2人に1人が得点保障のある受験生だった。
 10校の中でも上位校ほどその傾向は強い。大阪府立高校の双璧を成す北部の北野で受験者の94%、南部の天王寺で80%が英検2級以上を保有していた。続く茨木も79%。三国丘豊中大手前も50%を超えている。

大阪府教委がまとめた各年度の「公立高等学校 入学状況概要」をもとに、本紙が英語資格の活用者数を受験者数で割り算出した。

英検より英語のC問題の方が難しい

 「英語でC問題を使う学校を受験するなら、英検2級はとっておくべきだ。特に上位校ほど合格の最低条件と言っていい」
 こう分析するのは入試情報のスペシャリストで開成教育グループの藤山正彦室長。実際に今春の入試データから数字を拾うと、英検を活用し受験した91%(3180人)は、英語C問題を採用する高校だった。
 その理由は、英検2級よりC問題の方が難しいからだ。C問題はインターネットで公開されている過去問を見ればわかるが、長文読解力がキーとなる大学の共通テストに近い。

>>C問題の特集記事はコチラ

C問題は具体的に何が難しいのか?

 C問題は基本的に「文法」「長文読解」「英作文」の3つで構成される。なかでも全得点の半分以上を占める長文読解が4〜5題も連なる。最後の英作文も長文を読んで自分の意見を書く問題だが、模範解答は80語程度で書かれている。これをわずか30分で仕上げなければならないという制限時間の短さが最大のネックだ。実際の問題のイメージをつかむには、リンクを貼っておくので過去問をチェックしてみるといい。>>英語Cの過去問(令和5年度入試)
 続くリスニングも一筋縄にはいかない。パートA・Bは得点率が高いが、パートCはリスニング・リーディング・ライティングの3技能を合わせた大阪独自の特殊な問題だから、対策が必要になる。>>リスニングの過去問と音声
 実際に府教委のまとめによると、当日入試のスコアが最低保障を上回った受験生は、どの年も半数以下。特に19〜21年の3年間は10%台に低迷。しかも昨年はコロナ休校の影響で、数学の出題範囲が狭まったことで数学で大きな得点差がつかず、逆に英語Cの合格者平均が47点と低迷し、英検2級の取得が有利に働く事件が起きた。
 今春の英語入試に限っては例年より簡単で、北野や天王寺レベルの受験生から「英検は必要なかった」という声も聞かれた。それでも最低保障スコアを上回れた取得者はわずか37%に留まった。

>>2022年度入試 合格者の平均点はどのくらい?

 こう見ると入試でC問題と対峙する受験生にとって、英検2級がもたらすアドバンテージは大きい。というよりも、もはや英検が有利に働くのではなく、取っていないと不利になると言っていい。
 こうした状況を鑑みてか、開成教育セミナーが開く英検短期集中突破ゼミ(全8回)には、「宣伝しなくても、すぐに受講の申込みが一杯になる」という。
 藤山さんは「(受講生は)もちろん上位校受験をにらんだ中学生が中心だが、実は小学生も多くなってきた」と低年齢化の動きを指摘。「(英語が小学校で必修化されたが)学校では誰でも100点をとれる簡単なテストである場合が多く、本当に英語力がついているのかどうかが見極められない。小学校は英語が得意な教員もいれば不得意な教員もいる。だから、客観的評価を得るために保護者が英検を受験させているのだろう」と分析する。

勉強をはじめるなら理想は小学高学年

 話をもとに戻そう。上位校狙いの生徒にとって、もはや必須の英検2級。取得にはいつから取り組めばよいのか。
 よく聞くのは1年で4級、2年で3級、3年で2級の流れだ。今春、天王寺高校に入学した筆者の息子も「中3の11月に2級を取り、受験英語から開放されて、精神的に余裕が生まれた」と振り返りながら、「中学校で習う英単語は1600〜1800語だけど、英検2級は高卒レベルの5000語。一つ上の先輩が受験している時期、つまり中2の終わりぐらいが比較的ひまになるので、ここを英単語を覚える時期に充てるといい」とアドバイスする。

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 一方、藤山さんは「中3の1年間を残りの4教科に集中できるように、中2までに取得しておくのが理想」と言う。「低年齢過ぎるよりも、まずは日本語の能力が確立してから」と、小学5〜6年でスタートし、中1で3級、中2で2級の流れを勧めている。

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英検の優遇はいつまで続く?

 しばらくは英検を活用したこの受験戦略は続きそうだが、一つ懸念もある。C問題を回避するための英検取得がこんなにも進んでしまうと、C問題の存在意義がなくなってしまうからだ。加えて英検活用が進む一方、学校現場などから「生徒の英語力が低下している」と指摘する声も上がっている。
 こうした動きが出てくると、上位校を目指している子どもにとって「英検の得点保障がいつまで続くのか」が最大の関心事となってくる。

 府教委は「確かに、そういった声があることは把握している。しかし、入試における英検活用の是非について、今はまだ会議の俎上(そじょう)には載っていない」と現時点の状況を説明しているが、先のことはわからない。
 藤山さんは「仮に英検活用にメスが入るとしても、一気に変更してしまえば大きな批判が起きる。当日試験との得点割合を半々にするとか、着手するのであれば少しずつの変更になるのではないか」と見ている。「仮に動きが起きるとするなら、どんなに早くても25年入試からだから、現在の中1生までは安心して良いのではないか」と話している。
 上位校を目指す生徒にとっては、今や切っても切り離せない英検活用。最新の受験情報を得るためには常に府教委の動きに注視しておきたい。

>>「英検2級」に2年で合格するには、英語の並びを日本語で理解