大阪市内でベルギービールを提供する店を展開する「中井レストラン企画」(中井深社長)は大阪市中央区本町1丁目にビールの醸造所「船場ビール工場」をオープンさせた。コロナ禍前からの構想を厳しい経営環境の中で実現させ、「仕入れて売る」販社から「作って売る」製造販売会社へと業態転換。醸造所が敷地内で自家製ビールを提供するタップルームも併設しており、地域のコミュニティーづくりにも力を入れている。
創業は1985年。2019年の消費増税の際に、出店していた4店のうち1店の閉鎖を決断。大人数の宴会などに対応していた店で、20年には予約のキャンセルが続くなどコロナ禍の影響も受けていた。別の1店舗をのれん分けして2店舗に縮小、リピーターを増やすことに努めた。
「船場ビール工場」は閉店した「ドルフィンズ堺筋本町店」に工場の設備を導入することで、今年2月にオープン。初めての夏を迎えて本格稼働している。
中井社長はこれまでにベルギー国内で50カ所以上の醸造所を訪問。モルトやホップ、酵母はビールの種類によって、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツなどさまざまな国から輸入している。
モルトの配合、ホップの種類、入れるタイミングなどで、ほのかな柑橘(かんきつ)系の香りと味わいがある「ペールエール」、すっきりとした味わいとフルーティーな香りの「ゴールデンエール」、どっしりとしているがするする飲める「ベルジャンブラウン」と、3種類のベルギースタイルのビールを提供している。
現在、次女のあかねさんも醸造作業に従事。「重労働だがやりがいがある。毎回、同じ味を出せるようになりたい」と意欲を見せる。
タップルームで飲み比べる人も増えているほか、「5分で終わる工場見学ツアー」も開催。「ビールをきっかけに集まれるコミュニティーをつくりたい」という中井社長の思いが形になりつつある。