日本国内以外で、普通に日本語が通じる国があるだろうか? また州の公用語が日本語だと聞いたらどう思うか?
そんな現実が存在するのがパラオ共和国だ。


パラオ共和国は、西太平洋のミクロネシア地域に位置する500以上の群島からなる国で、人口は約1万8000人。長く他国の支配下に置かれていた歴史を持っているが、今はとても平和で自然豊かな国。

大阪万博ではコモンズA館に出展していて、優しい空気に包まれたパビリオンだ。
同国は、1800年代にスペインによって発見されて侵略を受け、その後スペインからドイツに売却され、第一次世界大戦後は日本がドイツから引き継いで統治支配していた。戦禍のない時期だったため、日本語教育を行ったり、現地の人から搾取することなく、平和に統治していたため、日本の遺産や遺物がたくさん残っており、日本語を話せる人が多いのはそのためだ。
第二次世界大戦で日本が敗戦してからはアメリカが一応統治していたが、比較的自由に国が運営されていた。1994年10月1日に正式に独立国として成立しているが、パラオは現在世界で最も新しい独立国となっている。
過去の統治の影響で、パラオ語以外に、英語と日本語が広く普及していて、「Angaur」という州では、州の公用語が日本語で、学校では日本語で授業が行われているというから驚きだ。

パラオ全体でみても、3割くらいの人が日本語が話せるのではないかということだった。
パラオパビリオンにいたRoRoさんというスタッフによると、彼の家族(両親と妻と子ども)は月額1000ドルくらいで暮らせているらしいが、「物価自体は日本より高い」ということで、実際はどうなのか考えてみたい。

RoRoさん家族は、持ち家のため家賃の負担はなし。食費や光熱費、ガソリン代といった基本的な生活費が月額約15万円程度かかるという。
「政府から光熱費の一部補助が出るため、全額を自己負担しているわけではない。それでもこの水準です」と話すRoRoさん。日本と比べて高いのか、それとも日本の生活コストが安すぎるのか――。
ガソリンが必需品の一つの理由は、皆が車に乗っているからで、歩いている人は多くない。そして車は日本車が圧倒的に多く走っているということだった。公共交通機関がないのは想像がつく。
また、パラオの人たちはお酒好きらしく、世界でもトップ3に入るくらいの飲みっぷりだそうだ。しかし悪酔いする人はおらず、喧嘩や事件に発展することはなく、至って社会は平和そのものだという。
ちなみに人気のアルコールはアサヒスーパードライ、「あのシルバーのやつ!」だと言っていた。他にもバドワイザーやハイネケンなどもあり、観光業が盛んなので、国際的な銘柄のアルコールが揃っている。
観光ではスキューバダイビングが最も有名で、国内のあちらこちらに有名なダイビングスポットがあり、世界中からダイバーがやってきているという。



赤いスポットがダイビングポイント
RoRoさんも普段は五つ星のホテルで働いているということで、お金持ちが集う場所でもあるようだ。
自然も豊富で、単位面積当たりの海洋生物種の生息数は世界一多いといわれている。
国自体は島が多いとはいえ、中心部など限られた地域が発展しているので、観光に来ても3、4日あれば目ぼしい場所を訪れて、買い物を済ませることができるという。スキューバダイビングも1日でダイビングスポットをいくつも回れるので、スキューバファンでもそんなに日数は要らないということだった。


日本との繋がりでいうと、戦前の統治時代から両国はかなり良好な関係を維持していて、2002年に崩落した橋の代わりに日本が新しい橋を寄贈したり、上皇陛下がパラオに来られた時は、慈しみを持って迎えられたそうだ。


また、日本人の木彫り師が現地の人々に技術を伝授し、その木彫りの中に、昔からの言い伝えなどの物語を彫って残していくことで伝統文化の一つが継承されている。木彫りはパラオの人々にとっては貴重なもので、日本との繋がりを象徴とする一つになっている。


RoRoさんがそうだったが、パラオの人は明るく朗らかで、楽しい性格の人たちだ。また、経済的に国全体が豊かではないので、お互いに助けあって生きることが普通で、困ったときは少しでもゆとりのある人が助けてあげるという助け合いの精神がある社会なのだ。女性が権力を持っていて土地やお金、称号などを管理しているのでうまくいっているのかもしれない。
古き良き日本を思い出してしまう。今ではお金が全てというような風潮があり、自分さえよければ、という圧も感じる日本は、パラオから学ぶことがあるのではないか、と感じる会話だった。
パラオ共和国までは日本から飛行機で5時間、東京から直行便が飛んでいる。