〝絶景〟を十三の入口に 淀川沿いに屋台22店「ミナモ十三」現地リポート

 梅田のビル群を望む淀川の河川敷に、22の屋台が軒を連ねる―。阪急十三駅から徒歩約5分、先月グランドオープンした「淀川つつみ市 ミナモ十三」だ。仕事帰りに一杯を楽しむ人、家族や友人と屋台グルメを巡る人、散歩の途中に立ち寄る人。メディアやSNSでも話題を集める新スポットを、記者も訪れてみた。

多くの来店客でにぎわうミナモ十三=9月12日、大阪市淀川区 

十三に新ランドマーク、続々誕生

 十三では今年4月、もと淀川区役所等跡地に、2つの図書館やスーパーマーケット、保育・学童施設などを備えた「JUSO CROSS(十三クロス)」が開業。都市機能の整備が進む中、水辺の魅力を生かす取り組みとして期待されているのが、ミナモ十三だ。

 大阪市淀川区が国土交通省の「かわまちづくり支援制度」を活用して進める事業で、公募で選ばれたRETOWN、類設計室、OneOsakaリバークルーズ事業共同体が整備・運営を担う。

 屋台エリアを担当するRETOWN(大阪市生野区)は、これまでも公共空間をオープン化するプロジェクトを多数手がけている。大正区・尻無川沿いの水辺を活用した複合施設「タグボート大正」や生野区の廃校を再生したコミュニティースペース「いくのパーク」などが有名だ。

 同社の松本篤社長が十三の魅力として挙げるのが、梅田に近く、阪急3路線が乗り入れる交通利便性。そして、今も残る「下町の文化や風情」と、そのすぐそばにある淀川の自然豊かな環境も、十三ならではの特色だという。

「十三の魅力を世界に発信したい」と話すRETOWNの松本篤社長=9月1日、RETOWN本社

〝絶景〟が十三を知るきっかけに

 ミナモ十三で意識されたのは、人を引きつける〝景色〟だ。そのイメージとして松本社長が挙げたのが、台湾・九份(きゅうふん)。象徴的な風景が写真を通じて広く知られ、世界中から人が訪れる場所になったことを例に、「十三も、まずは景色から入って知ってもらう」と話す。その先に描くのは、ミナモ十三が「世界中から十三に入ってくる入り口の一つ」になることだ。

 実際に記者も夜に訪れ、屋台をはしごしてみた。淀川越しに梅田の高層ビル群が浮かび上がり、日が落ちるにつれて、一つ、また一つとビルの明かりが鮮明になっていく。川面を渡る風を感じながら、明かりのともった屋台を巡り、料理と酒を味わう。梅田の夜景、その手前には屋台の明かりと行き交う人たち。この場所ならではの一枚を、思わず写真に収めた。

日が暮れると水面にもまちの明かりが映る=9月9日

多様な世代の人々が集まる

 ミナモ十三は観光客だけをターゲットにしているわけではない。地元住民や大阪の人が繰り返し利用できる店づくりを重視する。大手飲食チェーンをあえて入れず、中小事業者や個人を中心に、同じジャンルに偏らないよう出店を調整。価格もインバウンド向けに引き上げるのではなく、日常的に利用しやすい設定を出店者に求めているという。

 開業後、現地には幅広い層の人が訪れている。「蛸しゃぶと炭火焼き さえ季」の運営に携わる宮西真輝さんによると、十三以外からミナモ十三を目的に訪れる人がいる一方、仕事帰りに電車から屋台を見つけて途中下車する人や、川沿いを散歩中に立ち寄る人もいるという。年齢や性別を問わず、多様な人々が見られ、これまでの十三とはまた違った顔ぶれでにぎわっている印象を受けた。

 客からは、今後の展開を期待する声も聞かれる。「〝これからもお店は増えるの?〟と聞かれることも多いですね」と宮西さんは話す。

夜の屋台村は幻想的な雰囲気=9月9日

河川敷からまちへ

 ミナモ十三を訪れた人の流れは、河川敷だけにとどまらない。屋台で飲食した後に駅周辺の飲食店へ足を延ばす客もおり、周辺の店からは、開業後に「売り上げが上がった」との声も寄せられているという。

 屋台と十三の既存店とのつながりも生まれている。ミナモ十三に出店する「momose ― 旬の野菜とあてと酒 ―」では、旬の野菜を使った手作り料理とともに、十三の「ビストロ ソウルキッチン」から仕入れるキッシュを提供。店頭に立つ百瀬さんによると、キッシュをきっかけに同店を知り、ミナモ十三を訪れた後に実際に足を運んだと話す客もいるという。

 ミナモ十三は、屋台のほか、バーベキューやイベント、舟運なども組み合わせた水辺の拠点として計画されている。屋台も来年夏に向けて7枠を拡張する予定で、すでに30店以上から応募が寄せられている。開業時の22枠にも100店以上から応募があり、出店する側からの関心の高さもうかがえる。

 昔ながらの商店街や飲食店、新たに加わった都市機能、そして淀川の水辺。それぞれの魅力が重なりながら、十三のまちはアップデートを続けている。

再開発が進む阪急十三駅周辺MAP
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