高所得世帯にメリット大きい 政府の児童手当拡充

高所得世帯にメリット大きい 政府の児童手当拡充

 児童手当の拡充─。政府がこども未来戦略方針で打ち出した少子化対策の目玉だが、第一生命経済研究所はこのほど、児童手当拡充と扶養控除廃止の家計への影響を試算した。これによると、扶養控除の廃止で低中所得者と子ども1・2人世帯への充実分がさらに手薄になる一方、所得制限に引っかかっていた高所得世帯や3人目以降の子どもを持つ世帯にとっては、メリットの大きい改正内容であることが浮き彫りとなった。

 まずは今の児童手当制度についておさらいしよう。3歳未満の子ども1人につき月額1万5000円、3歳~小学生は1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は1万円が原則支給される。

 ただし、手当をもらえる家庭には所得制限がある。児童1人なら所得660万円(年収の目安は約876万円)、2人なら同698万円(同約918万円)、3人なら同736万円(同960万円)がそれぞれ限度額で、これを超える一定の所得までは1人あたり一律5000円(月)が支給され、上限額以上の所得になると支給されない。

 実際に支給されるのは毎年6月、10月、2月でそれぞれ前月分までの手当が入る。6月なら2~5月分が入金される形だ。

 政府の児童手当の拡充のポイントは3つ。一つ目は支給期間の延長だ。現在は中学生までが対象だが、3年間延長して高校生までにする。2つ目は第3子以降の支給額を一律3万円(月)に増額する。現状では小学生までが1万5000円、中学生が1万円なので2倍以上になる。そして3つ目が所得制限の撤廃となる。

 ただ、政府の方針には「中学生までの取り扱いとのバランスなどを踏まえ、高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理する」と明記されている。現行制度は0~15歳には児童手当、16~22歳には所得・住民税の扶養控除による税制優遇があるが、第一生命経済研究所は「児童手当の高校生までの延長に合わせて、16~18歳の扶養控除を廃止・縮小することを念頭に置いていると考えられる」と指摘している。

年収・子どもの数別での総支給額の試算
※年収は主たる生計者の値(収入の多い方)。協会けんぽ、厚生年金保険に加入する雇用者を想定し、税額の計算は扶養控除のほか、基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除を勘案した。※住民税は所得割のみ勘案。第1子の出生~末子の児童手当給付終了までの累計額 (出所)第一生命経済研究所が作成