【外から見たニッポン】スシローペロペロ事件の賠償額について思うこと

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 スシローペロペロ事件。原因を作った少年とその家族に対してスシローの運営会社「あきんどスシロー」が約6700万円の損害賠償請求をした件です。この事実と金額に関して世間では賛成、反対の意見が飛び交っていますが、私はもっと高額な請求をするべきだと思います。少年とその家族はこの金額でも反省するでしょうが、それでも模倣犯が出ないとは言えません。

 アメリカではこの様に社会に大きな影響を与える事案や内容がひどいものに関しては、実質的な損失額、今回で言えば6700万円だけでなく、懲罰的損害賠償(Punitive Damage)というものを上乗せして請求します。懲罰的損害賠償を加算する目的は同種の不法行為または刑事上の犯罪の再発防止のための警告の役割を果たすこと。例えばこの事案であれば懲罰的損害賠償として10億円を別途請求する、などです。

 実際にアメリカ国内でトヨタアメリカの社長が秘書にセクハラで訴えられた際に、損害賠償額が4000万ドル、懲罰的損害賠額が1億5000万ドルで、合計1億9000万ドル(当時のレートで212億円)もの額を請求されたことがあります。これは「トヨタという大企業の社長がセクハラをした」ということに対して、似た様な事案が起きない様にという警告を込めた請求額になっています。自己責任を徹底的に追求するアメリカならではの発想ですし、日本よりも企業に対して社会的責任を求める考え方の現れでもあります。

 他の例では、バーなどで未成年者に酒類を提供したあと、その未成年者が店を出て事故や事件を起こした場合、被害者は未成年者だけでなく、酒類を違法に未成年者に提供した店の責任者をも訴える事ができます。同じ様なケースでは既に酔っぱらっている人に酒類を提供したり、車の運転を容認したりした場合に、その人が事故などを起こすと同様に店主などが訴えられます。これらの場合、実際の損害額だけでなく懲罰的損害賠償額が加算されます。こういうケースでは数億円単位の請求が一般的。

 この様に桁外れな額を請求出来るという事実から、その様な額を請求される加害者にならない様にしようという思考が働くわけです。住んでいて感じたことですが、アメリカ人一般のモラルの低さを考えると、アメリカでペロペロ事件の様な事が起こらないのは、この懲罰的損害賠償があるからかもしれません。もしアメリカでペロペロ事件を起こせば確実に億単位の額を請求されるはずです。

 馬鹿げた動画が繰り返しSNSにアップロードされている現実とそれによって多大な迷惑を被っている企業やわれわれ一般の利用者の事を考えると日本でもこういう社会にとって大迷惑になる様な行為に対しては懲罰的損害賠償を認めても良いのではないかと思います。

 そうすることで、世間のバカモノの馬鹿げた行為を抑止する効果があるのであれば、ぜひともそうしてもらいたいものです。